「自分の軸がない」と悩んでいた私が、TwitterのCEOから学んだこと
「自分の軸がない……」
それは私の長年の悩みだった。
「自分の軸を持とう」
「何がやりたいのかきちんと把握しよう」
そんな風に社会に出る前にきちんとした自分の軸を作ることが大切だという風潮があったと思う。
自分の軸って一体なんなのだろうか?
就活でキャリアコンサルタントの無料セミナーに行っても、毎回同じことを聞かされていた。
「自己分析を掘り下げて、自分の軸を見極めましょう」
自己分析って必要なのか?
私は就活をするときにずっと疑問に思っていた。
自分が今までしてきたことを紙に書き込み、自分がやりたいこと、自分の軸となっている出来事を探るという自己分析が就活をする上で鉄板になっていた。
私も2〜3時間スターバックスにこもって自己分析に明け暮れていたものだ。
じっと自分がやってきたことを紙に書き込んでも、
自分は空っぽな人間だなと気づいて虚しくなるだけだった。
自己分析したところで、自分の軸などさっぱりわからなかった。
自分の軸って一体なんなんだよ!!!!
私はそんなモヤモヤを抱えながら就活をしていたと思う。
ベンチャー企業を受ける際に、自分の軸というものをとても考えさせられた。
私は毎日のようになだれ込んでくる就活メールに嫌気がさし、どの会社を受けたらいいのかさっぱりわからなかったので、数打ち当たれだと思い、片っ端から受けまくっていたのだが、その中にはハイテクのベンチャー企業もあった。
ベンチャー企業となると20代から30代の若手の人が中心になっている会社が多かった。面接や説明会でベンチャー企業を訪れると、大抵そう言った会社はオフィスも階級ごとに区切られていないため、働いている人が一望できるのだ。
そこで働く人たちを見て、私は俄然としていた。
みんな自分の軸を持って、輝きながら働いているように見えたのだ。
しっかりとした個性を持ち、自分たちがやりたいことを実現するためにテキパキ働いている人たちがそこにいたのだ。
私はベンチャー企業を訪れるたびに、自分にはこう言った企業で働くのは無理だ……
と思ってしまった。
働いている人たちはみんな強烈な個性を持ち、自分の軸をしっかりと持っている人達だらけだった。
ベンチャーは基本、自分の机もきちんと決まってなく、好きな場所で好きな人と仕事ができるようなオフィスになっていて、自分の軸を持っていないと会社での居場所がなくなってしまう気がしたのだ。
私は元来、強烈な人見知りのため、1日のうちで自分一人になれる時間が数分ないと精神的に滅入ってしまうところがある。
ベンチャー企業で働くとなると、オフィスも壁で区切られていないため、会社内で気を休める場所がなくなってしまう気がしたのだ。
自分の軸を持ちたい。
私はそんなことを思っていた。
やはり若くして自分の軸をしっかりと見極めた人は輝いて見える。
転職をする際も、きちんとした軸を持って面接に挑めるため、すぐに転職先が決定するのだ。
私は自分の軸がブレブレだった。
自分が傷つきたくない方向にいつも動いては、逃げてばかりいたと思う。
そんな自分を雇ってくれる会社はどこにもなかった。
新卒では30社以上落ち、転職する際もなかなか決まらなかった。
自分の軸を持ちたいと思い、海外を放浪してみたときもあった。
バックパッカーをやっている旅人たちはみんな自分の軸を持っているのだろうと思えたのだ。
しかし、海外に行っても自分がやりたいことなど見つからなかった。
海外の安宿に行くと世界中の旅人たちが集まってきていた。
そんな旅人たちは楽しそうにこれまでの旅を語っていたが、私はどこか心のそこで彼らを侮辱している自分がいることに気づいた。
この人たち所詮、日本から逃げてきただけなんだな…‥
世界一周している人は大抵30歳前に脱サラした人や休学中の学生だった。
楽しそうに旅を語る彼らを見ていても、どうしても納得できない私がいたのだ。
所詮、逃げてきただけじゃん……
そう思っている私も就職が嫌で逃げてきただけだった。
旅人を心の中でバカにしている自分が一番カッコ悪かった。
海外を旅すれば自分の軸が見つかると思っていた。
しかし、そんなことはなかった。
どうしたら自分の軸が見つかるんだろうと悩んでいる時にふとフェイスブック上で
こんな記事を見かけた。
「台本のない人生を生きろ」
それはTwitterのCEOが卒業生に贈ったスピーチをまとめたサイトだった。
私はなぜかその記事が目に入った。
なんだろう、この記事……
私は読んでいて、驚いてしまった。
Twitterの創立者であるディック・コストロはもともとコメディ俳優を目指して舞台に立っていた人だったのだ。
Twitterのように世界に影響を与えるベンチャー企業を立ち上げた人だから、ハーバード大卒の超エリートだと思っていたが、経歴を見るとそんなことはなかった。
20代の大半をコメディ俳優を目指して即興芝居をしていた人だったのだ。
芝居だけでは食っていけないと思い悩んでいる時にインターネットと出会ったという、ちょっと変わった経歴の持ち主だった。
私は記事の後半部分を読んで心動かされてしまった。
やはり人よりも変わった人生を歩んできた人たちが選ぶ言葉は多くの人を鷲掴みにする。
「台本のない人生を生きてください。人生は即興の連続です。
そして、自分が何をするべきかあまり考えないでください。そこには台本などないのです。20年後、皆さんはどんな舞台にいるのでしょうか? どんな人生になろうともその瞬間を全力で楽しむのです」
私はこれまでずっと、しっかりとした自分の軸を持たなきゃと思っていた。
軸を持たない自分が嫌で仕方がなかった。
しかし、しっかりとした自分の軸など持たず、自分が何をするべきかあまり真剣に考えない方がいいのかもしれない。
即興芝居のように、その瞬間だけを全力で感じ、その瞬間に得られるものを全て吸収していくことが大切なのではないかと思えたのだ。
「台本のない人生を生きろ」
自分の軸をしっかりと持ち、ある程度の台本を作った方が人生は楽だ。
しかし、自分が何をするべきかあまり考えずに、その場その場を全力で楽しむのも大切なのかもしれない。
就活の自己分析で自分の軸などさっぱりわからなかった私は、ようやく答えにたどり着けた気がした。
「自分が何をするべきかあまり考えないでください。台本のない人生を生きてください」
そんな言葉を胸に秘めて、今日も即興的にライティングに励んでいる。