ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

全然愛情がこもってないんですけど    

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「え? 全然愛情がこもってないんですけど」

それは自分が撮った写真を会社の人に見せたときのことだった。

ずばり、自分が感じていたことを指摘されたのだ。

 

篠山紀信って知ってる? その人が宮崎美子を見つけた時の話なんだけど」

その写真家なら自分は知っていた。

もしろん宮崎美子のことも。

 

宮崎美子ミノルタのCMに選ばれた理由なんだけど、当時付き合っていた彼氏が撮った素朴で愛らしい写真が篠山紀信の目についてCMガールに選ばれたんだ。たぶん、その彼が撮った彼氏の前でしか見せない素顔が審査員の心に響いたんだろうね。何が言いたいかというと写真って人のこころを直接写しているっていうこと」

 

ふだん、カメラの話とか特にしてこなかったが、ごもっともなことを言われた。

 

私はカメラを始めてから、ちょこちょこと人を撮る機会が増えてきた。

「カメラが好きだ!」といろんなところで叫び散らしているせいか、

撮ってもらいたいと言われる機会も増えてきたのだ。

 

だけど、どうしても心の奥底では感じていることがあったのだ。

「自分は相手にきちんと向き合っているのか?」

そんなことを感じることが度々あったのだ。

 

自分が普段、写真を撮って感じていたことを、直接会社の人から言われてしまった。

 

 

「写真って人のこころを写すから、その人が相手をどう見ているのかが一枚の写真から滲み出てしまうからね」

 

愛情を持って、人と接しているのか?

自分のこころを映し出す鏡となって、一枚の写真に出てきてしまう。

 

そんなことを痛烈に感じている時に言われた一言だった。

なんかガツンと感じてしまった。

 

自分はどうも昔から人と接するのが苦手だった。

人混みに入っていると、どうしても息がつまり、ノイローゼ状態になってしまう。

飲み会がどうしても苦手で、人が喋っているときの会話の流れについていけず、いつも口を閉ざして、ただ時間が過ぎるのを待っていた。

飲み会の席は本来楽しい場所のはずなのに、自分にとってはどうしても耐え難い時間という部分もあった。

 

これじゃいけない。

もっと人と関わるようにならなくちゃ。

そう思った時に手にしたのがカメラだった。

 

カメラを通じたら人とコミュニケーションが取れる。

そう思い、カメラを買ったのだ。

 

だけど、どうしてもカメラのファインダー越しに相手を見ていても、

少し距離を置いてしまう自分がいた。

 

あ、やっぱり自分の性格って写真に現れるんだ。

もっと、相手のことをよく知らなきゃ。

 

そんなことを感じて始めていた。

 

人から愛されたい。

人ともっと接したい。

 

そう思い、自分の中でもやもやが広がっていた。

 

どうしたら人ともっと関われるようになるのだろう。

人の心を突くような写真が撮れるようになるのだろう。

 

「とにかく量を撮るしかないよ。もっと写真を撮ればうまくなる」

そんなことを会社の人から言われた。

 

確かに量かもしれない。

だけど、性格ってなかなか治らない。

 

自分の中でモヤモヤが広がっていたこの頃。

ふと、思い出した。

 

「人を愛するということを大切にして下さい」

 

どこで聞いたのかよく覚えていないが、ラジオでYUKIが語っていたことだった。

 


「多くの人は、自分は幸せになりたいというけれども、自分の幸せを願うよりも、相手の幸せを願ってください」

 

人は愛されたいと思ったりする生き物だけど、まずは自分が人を愛するということを学んで下さい……そうすれば自然と自分のことを愛してくれる人が現れてくるとラジオで語っていたのだ。

 

それって写真において、ものすごく重要なことなのだと思う。

眼の前の被写体になってくれている人に対し、愛情を持って接することができるのか?

 

それが否が応でも、出来上がった一枚の写真に現れてくるのだ。

 

やっぱり人のこころに響くような写真を撮る人って、相手のことを優しい目線で見つめている人だと思う。

 

写真を撮るようになるまで、そのことに気がつけなかった。

 

相手のことを好きになる。

人を愛するようになる。

 

その気持を忘れないためにも、やっぱりより多くの写真を撮るしかないのだとふと思った。

 

人を好きになる努力。

それがいちばん大切なことなのかもしれない。