ライティング・ハイ

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あの地獄に満ちた就活の日々から、私はバズる記事の書き方を学んでいたのかもしれない

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「テレビ局を選んだ理由? う〜と金だよ」

 

私はずっこけてしまった。

民放キー局に内定した人もこんな入社理由だったのか……

 

「え? もっと大人な感じで喋った方が良かった。まあ、キー局を選んだ理由は給料がいいからだよ。面接ではもちろんそんなこと言えないけどね」

 

とある民放キー局に内定した大学の先輩は、私が会った時、すでに入社3年目だった。

ADからDに降格し、毎日夜のニュースの素材を集めるために走り回っている。

 

私はその時、就活というものをしていた。

遊びまわっていた大学時代も終盤を迎え、周囲の波に飲み込まれるかのように就活というものをしてみることにしたのだ。

私が受けていたのは、基本的にマスコミ関連だった。

広告代理店やテレビ局を受けまくり、ちょっとクリエイティブな仕事に就きたいと思っていたのだ。

 

面接をやるたびに私は違和感を感じていた。

なんで受かる人と受からない人がいるのか?

 

同じ大学を出ていても、内定を取りまくる人と内定を取れない人でくっきりと差が出てくるのだ。

面接で見抜かれるのは人柄か?

個性か? 喋り方なのか?

 

数分間、面接官と喋っただけで、年収1000万を超えてくる人と年収300万の人とが振り分けられてくるのだ。

もちろん学歴フィルターは存在する。

存在するが……企業側は学歴以上に人柄を重視したいとかいうことを言って、学生を集めまくる。

 

 

なんだかよくわからないゲームと化している日本の就活というゲームに、

私はその時、翻弄されていた。

 

どうすれば受かるのか?

私はもちろんのこと、内定が取れない方の学生だったのだ。

 

エントリーシートや面接のコツはOB訪問して、聞くのがいいと思いますよ」

大学のキャリアセンターの人にこう言われ、私は憧れの民放キー局の人に声をかけてみることにした。キャリアセンターに登録されてある昔のメールアドレス当てに、メッセージを送り、OB訪問をさせてくださいという趣旨を伝えていったのだ。

 

返信がくる人もいれば、こない人もいた。

数週間後、とある民法キー局内定者から連絡が来た。

 

「金曜日の夜なら時間取れるよ」

私は意気揚々としていた。

憧れの民法キー局内定者だ。

倍率1000倍を超えるテレビ局就活の最前線で戦い、見事栄光を勝ち取った人物だ。

きっと、人間的にも一枚上で、人格も磨かれた人なのだろうと思っていた。

 

しかし……

 

「テレビ局を受けた理由は給料がいいからだよ。仕事のやりがいは金かな」

 

私が仕事のやりがいを聞いて、こんな返答が来た時は驚いた。

そんな理由で倍率1000倍のテレビ局就活で勝ち上がったのか……

話を聞いたところ、その方は就活の時に、徹底的に面接官に惹かれる喋り方やワードを研究し、就活がはじまる一年も前から準備を始めていたという。

 

何が何でも就活で勝ち上がってやる。

そのために徹底的にOB訪問し、エントリーシートを分析して、面接を極めていったらしいのだ。

 

私は面接で勝ち上がっていくのは、人格がすぐれている人だと思っていた。

しかし、実際の内定者に会ってみると、全員がそんなことはなく、ただ単に、

人にどう伝えるか? ということが上手い人が多かった気がする。

 

「人格なんて関係ない。目の前の面接官にどれほど好かれるかが勝負の分かれ目だ。そのために俺は徹底的に就活というものを分析したんだ。適当に周囲に流されるがままに面接を受けていたら、あっという間に就活は終わってしまうよ」

 

私は、そんなことを言われてしまった。

人格とかは関係ないんだ。目の前の面接官にどれほど好かれるかだ問題なのか……

 

 

私はその日から、徹底的に就活というものを考えるようになった。

無料の面接セミナーにも通い始めた。

 

どうすれば、面接官に好かれる喋り方を手に入れられるかを自分なりに分析していったのだ。

私はもともと喋るのが大の苦手だった。

人前に立つと上がってしまう性格があり、飲み会なども苦手だった。

 

就活のグループ面接などで無双している人は、たいてい合コンなどに行きまくっていた

人が多かった。

興味のある異性にどう惹かれるかというものを考え続けてきた人は、やはり就活でも無双している。

 

私はどうも人前に立つのが苦手な性格があり、この面接というものが大の苦手だった。

どうすればいいんだ……

 

途方に暮れていた時、どこだか忘れてしまったが、とある本を紹介するウェブページを見かけた。

 

「テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!」

私はタイトルを見た瞬間、ぶっ飛んでしまった。

なんだこのタイトルは。

 

その本はもう絶版されてしまい、本屋では手に入らなくなってしまったが、長年、マスコミ就活の最前線で戦う就活生を分析し、内定が出る人と出ない人が醸し出す空気というものを研究し、考え抜かれた究極の就活対策本だという。

 

多くのマスコミ内定者がこの本に書かれてあることを実践してきたのだ。

 

 

私は衝撃的なタイトルに惹かれてしまい、その本をアマゾンで購入し、読んでみることにしてみた。

「私見た目以上にエッチです」

そう自己PRした民放キー局アナウンサーの話や、NHKを受けるのに

「受信料は払っていません」と豪語した人など、普段では聞けることのないマスコミ就活最前線の逸話が盛りだくさんだった。

 

なんだこの本……

めちゃくちゃ面白いじゃないか!

 

私は夢中になりながら「パンチラ見せれば通るわよっ!」

通称「パンチラ」を読んでいった。

 

 

確かにな。

受かる人はこれを実践しているよな。

 

あまりにも面白いので、私はその著者の続編ともいうべき就活対策本も読んでいくことにした。

そこには内定が出る人と出ない人との決定的な差が書かれてあった。

なるほどな……

そりゃ、そうだな。

私はその本に書かれてあったことを見て、妙に納得してしまった。

恋愛においてもここが大きな境目だよな。

受かる人と落ちる人の差はここか……

 

 

私は結局、その境目を乗り越えることができず、就活では惨敗してしまった。

その本に書かれてあったことは理解できたが、実践の場では活かしきれなかったのだ。

就活ではうまくいかなかったが、こうして文章を書くようになってから、その本に書かれてあったことが身に染みてわかるようになった。

 

「2017年は毎日、何かしらの文章を書く!」

そう去年の大晦日に宣言してから、私はとにかく毎日書こうと思い、こうして書き続けてきたのだが、何度か妙にバズった記事があったのだ。

(バズったと言っても大したことない数字だが)

 

自分の身近にいるハイパーなバズを起こすライターさんの文章も読んでみて、やはりバズを起こすような文章にはあるものが滲み出てきているような気がするのだ。

 

文章に込められたその人の人間性や人柄も要因の一つかもしれない。

しかし、自分と違ってバズを連発できるような人はあるものを獲得しているケースが多いのだ。

それは就活で内定を獲得できる人と出来ない人との決定的な差と同じだ。

 

バズを起こせるライターさんは何を持っているのか……

 

それは「余裕」だと思う。

 

 

どこか心のそこで余裕がある人は、人を惹きつけるのだ。

就活の場においても内定を獲得できる人は、心の底では、「余裕」を持っている。

 

「もう一社内定出ているから、この会社に受からなくても別にいいや。

ま、内定くれたらありがたいけどね」

そんな余裕を醸し出している人はどこか人を惹きつけ、面接官から好かれる傾向があるのだ。

逆に一個も内定を獲得できない就活生の共通点は、「余裕」のなさが面接で滲み出ているらしい。

 

「この会社が受からなければ、もう次がない……何が何でも受からなきゃ!」

そんな焦りからくる緊張で、面接では空回りしてしまい、やる気は伝わっても、面接官から引かれてしまうのだ。

 

恋愛でも同じだ。

恋愛上手でいつも異性が周りにいるような人は、どこか心のそこで「余裕」を持っている。

「別にあなたじゃなくても大丈夫だけどね」

そんな心に「余裕」がある人は、異性をなおさら惹きつけるのだ。

 

 

バズを起こせるライターさんが持っているものは何なのか?

大量のバズも起こせない自分が言うのも恐縮だが、やはり心のそこで「余裕」を持って書いている人はバズを起こせる可能性が高いのだと思う。

 

「余裕」がある文章は人を惹きつけるのだ。

 

就活でも恋愛でもライティングでも、「余裕」というものがキーワードな気がする。

私は結局、就活の時にその「余裕」というものを手に入れることができず、惨敗してしまった。

自分ならもっと上の会社に受かる。

自分はクリエイティブなものを持っている。

 

そんな自意識過剰とも言える意識が邪魔をして、「余裕」がないまま面接を受け……

どこにも内定を獲得することができなかった。

 

 

何で自分はどこにも受からないのか……

面接で落ち続けると自分は社会から必要とされていない存在のように思えてきて、何だか苦しくなってくるものだ。

 

就活と言ったら、私にとって地獄でしかなかった。

 

しかし、今思うとあの地獄に満ちた就活の日々も無駄ではなかったのではと思うことがある。

 

就活の時に、どうすれば人に伝わるのか?

どうしたら目の前の人を楽しませることができるのか? 

を必死に考えたから、こうして毎日何かしらの文章を書けるようになったのかもしれない。

 

才能がない私は多くの人を惹きつける文章を書けるわけではない。

ハイパーなバズを起こせるわけでもない。

 

しかし、就活で学んだことも活かしながら、これからも書き続けるしかないのかもしれない。

書けば見えてくるものがある。

 

その言葉を信じて。