ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

どうしても鎖から逃げ出すことができない、この社会    

f:id:kiku9:20180617214347j:plain

 

「あの方、どうしても会社を辞めたくて苦しんでいるみたいです」

知り合い伝いによくこんなことを聞くことがある。

 

社会人になって2、3年目ですけど会社を辞めたくて仕方がなくて、

だけど辞める勇気もなくてうつ状態な感じで……

 

 

自分は社会人一年目で早速会社を辞め、社会のレールから一度ドロップアウトしてしまった経歴がある。

そんな経歴があるせいか、たまに転職の悩みが自分のところに飛んできたりする。

 

直接お話はしたことがないが、友人伝いに聞くところによると、その方は多分、

相当切迫した状態なのだろう。

 

自分も一度経験したから痛いほどわかるのだが、自分と相性が悪い会社に入ってしまうほどストレスを感じることはない。

 

毎日月曜日の朝から、会議に出て、夜遅くまで仕事する毎日。

たぶん、自分が少しでも興味がある分野なら集中して定時まで耐えられるだろう。

だけど、世の中の半分以上がとくに興味があるわけではないが、なんとかく今の職場にたどり着いた形なのだと思う。

 

合わない上司やムダに長い会議に出席しているうちに精神がボロボロになってくる。

会社を辞めたくても、辞める勇気がない。

辞めたらお金に困ってしまう。そんなことをよく聞く。

 

自分の場合は電車に飛び降りそうになるくらい切羽詰まっていたので、

後先考えずにバサッと鎖をちぎってしまったが、たぶん普通の状態だと無理だと思う。

 

「辛かったら辞めればいいじゃん」

ブラック企業に入ってしまったら、バサッと辞めちゃえばいいじゃん」

そんなことを大学の頃は思っていた。

 

だけど、実際に社会に出て働くようになってから、そんなに物事は単純じゃないことが身にしみてわかってきた気がする。

 

 

「え? こんなに早く帰ってしまうの」

自分は今、営業の仕事をしている。

地方を飛び回り、都内を走り回っているのだが、最近身にしみて感じることがある。

どこの会社もみんな5時過ぎになると帰宅してしまうのだ。

そんなに早く帰って、何かやることがあるのか。

 

不思議なのが課長以上の上司だけでなく、新卒をはじめとした20代の多くも、

定時以降に仕事をすること、残業することに対して厳しくなってきたことだ。

(おそらく大手広告代理店のあの事件がきっかけ)

 

営業の仕事をしていて、5時以降に電話しても

「本日の勤務は終了しました」という着信が出るから驚く。

 

え? 世の中って普通5時過ぎになるとみんな帰ってしまうのか。

今現在、自分は毎日23時過ぎ仕事をするのか当たり前の環境なので、

世の中の変化に驚いてしまった。

 

というか、むしろ早く帰るのが働き方的にはいいのか。

 

だけど、新卒で入社したての人が、17時になったから「お疲れ様でした」

と勝手に帰ってしまうのも、なんだかいいのか悪いのかよくわからない。

 

働き方改革」が叫ばれるようになってから、

死に物狂いで働きまくるベンチャー企業と中小企業タイプと、

定時になったら綺麗さっぱりオフィスから人が消えていく大企業タイプの2つで、

働き方が完全に二極化されていっている気がする。

 

どちらも正解で、どちらも正しい働き方なのかもしれない。

だけど、どうも違和感があった。

 

いま日本で叫ばれている「働き方改革」。

それって本当に若い人が定時で帰れることが正解なのだろうか。

 

自分が今勤めている会社がブラック企業なのかはよくわからない。

(たぶん、世の中の基準的にはそこそこな黒?)

 

以前にいたテレビ制作の現場はだいぶ過酷だった。

だけど、どんなにブラックな会社でも、その働いている本人が苦しくなかったら、

ブラック企業とは呼べない気がするし、どんな働き方が正解なのかは本人にしかわからない。

 

だけど、以前から感じていた違和感があった。

ずっとずっと感じていた違和感。

 

実は会社から逃げ出せるのに逃げ出せないという仕組み……

それが日本の仕事に対するあり方の根本にある問題なのかもしれない。

 

相談を受けたその方も「会社を辞めたい」ことに悩んでいるのではなく、

「会社を辞めたいのに、辞めづらい」ことに悩んでいた気がするのだ。

 

 

自分は中小企業に勤めている身である。

 

正直、大手企業に勤めたことがないから現状はよくわからないのだが、

日本のほぼすべての中小企業って、一人が抜けると自然と他の人に負担が増えるような仕組みになっていると思う。

 

 

私が以前に努めていたテレビ制作の現場も、自分の前に、一人のADが疾走してしまったため、その人がやっていた仕事が自分に押し寄せるような形になってしまった。

(その結果、5日以上寝れない日々が続いて、ぶっ倒れるという事態に)

 

 

誰か一人が抜けると、その分、誰かの負担が倍増するような仕組み。

そのような労働環境があるため、心優しい人は辞めたくても、上司や部下のことを思って、辞めづらくなる。

 

 

自分の会社にも一人そんな方がいた。

精神的に病んでしまい、しばらく入院していたが、結局会社に戻ってきていた。

 

正直、病んでしまうなら、今すぐに転職すればいいと思ってしまった。

だけど、優しい人のため、会社に戻っていろいろ後輩のための指導を行ってくれている。

その優しさを見るたびに、逆に胸が苦しくなる。

 

働き方改革の正体……

 

それって、若手が仕事で過労死しないように定時に帰宅させることではなく、

ある一人の社員が抜けても、仕事に代替が効くような、あらゆる働き方が認められた

労働環境のことではないのか。

 

いくら、定時に帰える習慣を作っても、職場を辞めることが出来ない精神的な鎖を生み出す企業があるかぎり、日本人の働き方って変わることはないのだろうと思う。

 

なんだか、ずいぶん生意気でエグいことを書いてしまって申し訳ない。

 

社会に出てもまだ2年近くしか経っていない自分が言うのもなんだが、

やたらと定時に帰宅する大学の同期を見ていくうちにそんなことを感じてしまった。