ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

「何を捨てて、何を捨てないか?」その判断基準は結局……

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「どんな写真が撮りたいんですか?」

度々、出会う人にこんなことを言われる。

 

そのたびに私は返答に困ってしまう。

自分は一体どんな写真を撮りたいのだろう?

どんなことをやりたいのだろう。

 

 

頭のなかにはあやふやだが、何かを伝えたいという思いはあった。

だけど、言葉にしようとしたら伝わらない何かがいつもあった。

 

自分は一体何がやりたいのか。

 

カメラを買って、写真を撮るようになってからもうすぐ一年が経つ。

その間にいろんな方々とあった。

 

本物のプロのカメラマンともあったし、プロ級に写真が撮るのがうまいアマチュアの方々ともいろんな人ともあった。

 

会社にいても「あいつはなんかいつもカメラを持ち歩いているし、写真の話ばかりする変なやつ」みたいな扱いになってしまっている。

 

自分が入社した会社はカメラを扱う会社だった。

もともと映画が大好きで、映画と関係した仕事がしたいと思い、映画用のカメラや業務用のカメラを扱う会社に入社した。

 

カメラが好きということもあって、超自己中な性格で、そこそこ社会不適合なところが若干あるかもしれないが、なんとか一年以上続けて働くことが出来ている。

 

よく考えれば、上司と会話するときもいつも、カメラの話しかしていない。

 

「今度の週末どこに写真を撮りに行くの?」

金曜日が近づくと毎回そんなことを聞かれる。

 

この一年近く、周囲に「カメラが好きだ!」と叫び続けたこともあって、

最近だと「写真を撮ってください」と個人宛にメッセージを送って頂けることもある。

本当にありがたいことだ。

 

とにかく何でもいいから撮って撮りまくることを続けてきた気がする。

なんでこんなに写真を撮っているのだろうか。

 

「で、結局どんなことを表現したいの? 君は何がしたいの?」

そんなことを年配の方に投げかけられたことがある。

 

自分は何がしたいのか?

どんなことを表現したいのか?

 

最近だとデジタル一眼カメラの性能もすごく上がって、プロとアマチュアの差が殆どなくなってきている。

自分みたいな素人の目でも、普通に会社員をしていて週末にカメラを持っている方が撮った写真でも、プロとほぼ同じにしか思えない。

 

一昔前だったらカメラといったら高級なもので選ばれた人しか手に出来なかった代物のはずだったが、今ではビックカメラでプロ級のカメラが簡単に変えてしまう時代だ。

 

Instagramではプロとかアマチュアと関係なく、鮮やかで彩りのあるキレイな写真でごった返している。

そんな写真で溢れかえっている現代の中で、Instagramを眺めているとどうしても考えてしまう。

 

自分はどんな写真を撮りたいんだろう?

何がやりたいんだろうか。

 

 

何かモヤモヤとしたものがずっと腹の底にはあった。

何か伝えたい事があるのに、何か表現したいことがあるのに、何を伝えたらいいのかわかないもどかしさ。

それが腹の底で煮えたぎり、仕事をしていてもずっと、もやもやが消えなかった。

 

そんな感じで一年が過ぎ、ゴールデンウィークの季節になった。

普段ゴールデンウィークといったら、どこ行っても混んでいるし、飛行機代もバカ高いため、家でずっと引きこもっているのが常だったが、今年はなぜか違った。

 

ずっと日本に閉じこもって、会社で仕事ばかりしていた影響か、異常に海外に飛び出してみたくなった。

 

今年は海外でもいくか。

そう思い、何も考えないまま香港行きの飛行機のチケットを買った。

学生時代は一人でバックパッカー旅行とか行っていたので、あまり躊躇はなかった。

 

泊まるところとかも決めなくても、なんとかなるっしょ。

そんな適当な考えで、とにかく海外に行こうと思い、チケットだけを買った。

 

香港と決めたのはただ単にフォトジェネティックなイメージが強かったからだ。

満島ひかりが香港の夜道を蝶のように舞い踊る「ラビリンス」というPVを見て、香港に興味を持ったことも理由にあった。

 

とにかく行ってみたらなんとかなるっしょ。

 

そんなノリと勢いだけで、とにかく現地に飛び込んでみた。

 

宿を予約しなかったことが災難だった。

 

「No bookingの人は泊められないな」

どこの安宿を行っても、同じことを言われる。

 

何、中国にもゴールデンウィークってあるの。

てか、ゴールデンウィークって日本だけじゃないの!

 

 

香港は中国の特別経済区域である。

中国の異常な経済成長の影響もあって、中国本土からの旅行客が急増しているという。

それに香港がイギリスから返還されてから今までに自由貿易が加速されて世界中の企業がアジアの拠点を香港に置いている。

そのため、年間何万人もの観光客が香港を訪れているという。

 

中国の暦では5月の初旬が休みという事もあって、安宿がどこも満席である。

 

マジか……

完全に学生時代のノリで、ひとまず安宿に飛び込めばどこでも簡単に泊められると思っていたが、大の誤算である。

 

結局、一泊200香港ドル(3千円くらい)の安宿の部類になるドミトリーに泊まることにした。

 

案の定、異常に汚かったけど。

夜中にインド人が騒いでいるけども……

朝起きたら足にムカデがのっていたけども……

 

ま、安宿だから仕方ないか。

そう思って、適当に気ままに香港を旅して回った。

 

行き先も特に決めなかった。

泊まった先は重慶大厦という香港の中心街では有名な安宿で、宿の前の大通りには地下鉄の駅もあり、大型のバスもとまる。

 

特に行き先も決めず、バスに飛び乗って、適当に香港を歩いて回った。

(バスの行き先が中国語で読めず、下りた先が何駅なのかわからなかったため、だいぶ道に迷ったが)

 

ずっとブラブラしていたこともあり、最終日が近づくに連れて、体調が結構、しんどくなっていた。

炎天下の中、ずっと外をぶらぶら歩いていたため、体調不良になってしまった。

 

せっかくだけど、今日は宿の近くでじっとしているか……

 

貴重なゴールデンウィークの休暇だったが、奇跡的に6日も海外に行けた。

最初からかっ飛ばして、いろいろ回りすぎたのだ。

 

宿の近くにあったカフェで本を読むことにした。

なぜかよくわからないが日本から村上春樹の本を持ってきていた。

空港に向かう途中でふと本屋に立ち寄ったとき、気になって買ってしまったものだ。

 

「職業としての小説家」

結構有名な本だから知っている人も多いかもしれない。

 

世界的な小説家村上春樹が思う存分、小説を書くことについてまとめた著書だ。

自分はそこまで村上春樹が好きということでもない。

 

有名な本はいちよ全部読んでいるけど、めちゃくちゃ好きかと言われたら、そうとも言えるし、そうではないとも言える。

だけど、この人の考え方、なんか面白いなと思い、気がついたら読んでしまう。

 

本を開けて、読んでいった。

何で香港まで遥々やってきて、カフェで本を読んでいるのかよくわからないが、

日本にいるときはずっと会社に閉じこもって仕事ばかりしているので、たまにはこういう何もしない時間というものは大切なのかもしれない。

 

 

気がついたら夢中になって読んでしまった。

完全に時が経つのを忘れてしまった。

 

そこにはオリジナルについて書かれた一節があった。

 

「大切なことは自分から何かをマイナスにしていくことです」

 

小説を書く上でどうしても問題になっていくオリジナリティの問題。

その問題にぶち当たったとき、村上春樹氏はこう考えたという。

 

「自分から何かをマイナスにしていくことです。何かモノを作るとき、とりあえず必要のないコンテンツを捨てていけば、頭の中はスッキリします」

 

それで何を捨てて、何を捨てないかを判断にする時、

「それをやっていて自分が本当に好きかどうか」を判断基準にするという。

 

この小説を書いていて自分が心から楽しいと思うのかどうか。

心がワクワクするかどうかを基準にして、小説を書き続けているという。

 

なぜかこの一説を読んで結構考えさせられてしまった。

 

写真が好きだと周囲に言い続けたこともあって、最近だとちょこちょこと

「写真を撮ってください」ということを言われることがある。

 

可愛い女の子の前に立って、そこそこの一眼カメラでピンぼけをして、写真を撮るのは簡単だ。

可愛い写真は案外撮れてしまう。

 

だけど、自分が撮りたいものってなんだろうと結構考えてしまっていた。

自分がいままで撮った中で一番心がワクワクしたもの。

 

それは可愛い表情とかではなくて、どこか悲しい切なさがあって、少しもの暗い写真だったりする。

 

キレイな美女が写っている写真というよりも、

本を読んでいる物静かな風景、そういったものの方が好きである。

 

何かこの本を読んだことによって、少し答えが出てきた気がする。

ずっと、目の前に霧がかかっていたが、そのもやもやとした霧も少しだけ晴れてきた気がするのだ。

 

 

「どんな写真を撮りたいのか」

自分はこうでこうですという正確な答えはすぐにうまく言葉に出てこないけど、

「どんな写真を撮るのが好きなのか?」という答えは出た気がする。

 

海外まで出てきたかいがあったのかよくわからないが、日本に閉じこもっていただけだと見えてこなかったものが、薄ぼんやりと見えてきた気がする。