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年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

松岡茉優主演の映画「勝手にふるえてろ」を観て、才能の本質=リズム感だと気付かされた

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「なんか松岡茉優がとてつもない演技していたよ」

普段、仲良くさせていただいている映画好きの方がSNSでこんなコメントを書かれていた。

 

松岡茉優

あの「桐島、部活やめるってよ」の人か?

 

私は普段、ほとんどテレビを見ないせいか、日本の芸能界で活躍している人の名前をほとんど知らない。

 

アイドルのグループとかスマップくらいしかわからない。

女優さんの名前も映画で見かけたことがある人なら、なんとなく顔がわかるくらいで、あまり自分から名前をググったりしない。

 

 

映画は大好きだけど、作品や監督自体に興味はあっても、俳優や女優さんにあまり関心が向かなかった。

 

「とにかく松岡茉優が凄かった」

やたらと自分の周りにいる映画好きの人たちが声をあげてそう語っていた。

 

話題になっていた映画は去年の年末に公開された「勝手にふるえてろ」である。

原作は最年少で芥川賞を受賞した綿矢りさの小説である。

 

正直、予告編を見る限り、あまり期待はしていなかった。

また、邦画特有の青春映画だろとしか思っていなかったのだ。

 

私は学生時代にはアホみたいに映画を見まくっていたが(年間350本)……

そのほとんどが洋画である。

なんか邦画特有の陰気臭さというか、内面をむき出して、客先に届けるというか、監督の個性と内面がスクリーンに出されている映画があまりにも多すぎて、どうも邦画は肌には合わなかった。

 

基本的に話題になっている映画は劇場に飛び込んで見るようにしていたが、

昔から「バックトゥザフューチャー」をはじめとした洋画を見て育ってきた影響か、邦画というものにどうしても抵抗があった。

 

 

勝手にふるえてろ?」

また、陰気臭い邦画特有の青春映画だろ。

そんなことを思い、全く期待していなかった。

 

しかし、自分の周りにいる人にはやたらと評判がいい。

普段、あまりそんなことをしないのだが、ネット上でググってみると、

映画を見た人の評価も圧倒的に高評価が多いという。

 

一度見ただけで満足せず、何回も繰り返してみるリピーター客が増加中だという。

 

なんだ、このリピーター客で溢れかえっている映画は……

気になって仕方がなく、休みの日に見に行ってみることにした。

 

映画館は満員だった。

公開されて二週間以上経っているのに、満員ってすごいな。

 

しかも、超低予算映画のため、東宝シネマズなどの大型シネコンでは公開されていないにも関わらず、SNSで話題になり、映画館に駆け込んでいる人が増えているという。

 

 

人でごった返している渋谷の映画館の座席に座る。

時間になると本編が始まった。

 

周囲は若いカップルと映画好きのおじさんでごった返していたが、私は目の前のスクリーンに集中した。

 

 

とにかく面白いのである。

笑えるのである。

 

主演を演じる松岡茉優の演技といい、会話のテンポが凄すぎて、一瞬も見ていて飽きないのだ。

 

明らかに監督とディスカッションをしながら、楽しく、おかしく、撮影して行ったのだろう。

 

ところどころで笑いが散りばめられていて、会場は爆笑の嵐である。

自分も正直、映画館の中でここまで爆笑したのは初めてだった。

 

 

ものすごいセリフ量をものすごいスピードで話しまくる主人公の女の子の姿を見ていると、ずっと会話のテンポに追いつくことに必死で、見ていて一瞬も飽きない。

 

内面に生きづらさを抱えて、必死に生きている拗らせキャラの主人公を見ていると、自分と重なって見えてきてしまい、なんだか応援したくなるのだ。

涙が出てくるのだ。

 

ところどころに笑いがはさまれ、それに加えてシリアスなトーンに切り替わる。

 

私は終始、この映画を見ていてこう思った。

 

「よく、この映画ちゃんとした形になっているな」

 

コミカルなシーンと妄想なシーンがテンポつながっていて、普通だったらとても見づらいはずなのに、とにかく次の展開が気になって仕方がないのだ。

 

テンポがあまりにも良くて、見ていて心地よくなってくるのだ。

 

しかも、前半のコミカルなシーンを残しつつ、後半はきちんとシリアスな雰囲気になってくる。

24歳で都会の孤独に疲れ、妄想の世界に逃げ込んでいた女性が必死にもがきながら、懸命に生きて行く姿に涙が溢れてくるのだ。

 

 

映画が終わった瞬間、こう思ってしまった。

「もう一回見たい!」

とにかくあまりにも映画が面白すぎて、再び見たくなってしまうのだ。

リピーターが多いと聞いていたが、それも納得である。

 

自分のようにSNS時代に生きづらさを抱えている人にとって、共感できるシーンが多いと思う。

 

私は映画を見終わった後、帰りの電車の中でふと思った。

あれ? なんであんなに見やすかったのだろう。

 

とにかくテンポが早くて、スピード感がある映画なのにとてつもなく見やすいのだ。見ていて心地よいのだ。

 

 

あれ、これってもしかして松岡茉優の独特なセリフ回しのおかげじゃない。

 

あまりバラエティ番組は見る方ではないが、何度か主演の松岡茉優がバラエティで出ているところを見かけたことがあった。

 

やたらと独特なテンポで喋る人だなと思っていたが、このテンポ感が明らかに映画全体を支えている感じがあったのだ。

 

よく考えれば、ビートたけし明石家さんまもしゃべりで一番大切なのは「間」だと言っていた。

 

独特なリズム感が笑いの出来を左右すると。

このリズム感って自分から生み出すものではなく、本人がもともと持っている才能の一つなのかもしれない。ダウンタウン松本人志もとにかく独特な「間」がすごいと思う。

 

この映画を撮った監督もこのことを意識していたのだろうか。

バラエティ番組で普段見せている松岡茉優の独特なしゃべり方とテンポ感が画面全体に澄み渡り、しかも、監督が意図的にリズム感をなくさないようにシーンをつなぎ合わせていたりする。

 

とにかくテンポ良く次々と話が進んでいくので、見ていて心地よいのだ。

 

 

よく考えたら全てのコンテンツの質を左右するのはこのリズム感なのかもしれない。

私は普段、カメラで写真を撮ったりしているが、ある女性プロカメラマンに

「写真を撮る時はリズムというものを大切にしてくだいさい!」

と言われたことがあった。

 

最初は、なんで写真なのにリズムが大切なのだろうと思っていた。

 

しかし、毎日写真を撮るようになってから、いかに自分の中にあるリズム感というものが写真に影響を与えるのかがなんとなくだけどわかってきた気がする。

 

ポートレートなどを撮っていると身にしみて感じるのだが、

自分の中に持っているリズム感と、被写体が持つテンポ感が重なった時、異様にいい写真が撮れたりするのだ。

 

なんか相手のリズム感にあわせて写真を撮っている感じ……

この感じがたまらなく好きで、自分は写真を撮ることが好きなのかもしれない。

 

この誰しもが持っているはずのテンポ感、リズム感。

才能がない私が言うのも恐縮なのだが、リズム感こそその人の才能を左右するし、出来上がったコンテンツの質を大きく左右するのだと思う。

 

 

 

勝手にふるえてろ」の主演を演じきった時に出てきた松岡茉優の独特のテンポ感は正直、努力で培うものではないと思う。

もはや才能なんだなと見ていて思ってしまった。

 

とにかく「勝手にふるえてろ」。

半端なく面白かった。

 

こんなに面白い映画久々に見た感じだ。