ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

「やりたいのにやれない」という思いに苦しむ人がいたら、「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」は特別な薬になるかもしれない  

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「また、今年もスター・ウォーズか……」

もはや年末恒例の行事にもなっているスター・ウォーズの公開日が迫ってきていた。

子供の頃から映画が好きで、もちろんスター・ウォーズも一通り見ているが、正直言うと今回はあまり期待していなかった。

 

純粋なファンとして心のそこでは

「もうスター・ウォーズはいいよ」という思いと、

「え? エピソード6の続きが見れるの!」

という期待を込めて公開日を待っている自分がいる。

 

世界中を熱狂させてきた「スター・ウォーズ」シリーズ。

全作品とまでは言わないが、何シリーズか見たことのなる人も多いはず。

私も純粋なファンとして、「スター・ウォーズ」が公開されると映画館に飛び込むようにしていた。

 

だけど、エピソード8が公開される時は、正直本当に期待していなかった。

 

自分の周りを含めて、映画好きの人たちの間ではJJエイブラムスが監督した

「エピソード7」の評判があまり良くなかった上に、あのディズニーが大金を払って続編を作っても「エピソード7」の二の舞になるだけじゃないかと思っていた。

 

スターウォーズはどちらかというと、初期の監督をやっていたジョージルーカスの人生が反映されている面が多い。

 

 

「映画なんて作って何になる!」と父親にバカにされ、家を飛び出していったジョージルーカスの父と子の葛藤がスクリーン上に描かれているからこそ、心にジーンとくるのだ。

 

当時のルーカス青年は、カリフォルニアの田舎に生まれ、沈みゆく太陽を見ながら、

「自分は一生この地で終わっていくのか」と思いを馳せていたのかもしれない。

 

映画の中での砂漠の地平線上に沈んでいく夕日を眺めるルーク・スカイウォーカーとルーカス本人の心情が重なって見えて、涙が溢れてくる。

 

 

やはり、映画などをはじめとしたあらゆる芸術作品は作り手の思いや熱意がにじみ出ているものが、一番心に響くのだろうと思う。

 

 

何万人もの従業員を抱えたディズニー帝国が、大ヒット映画の続編を作っても、

ファンサービス満載のただ見ていて楽しい映画だけで終わってしまう気がしていたのだ。実際、巷の評判では「エピソード7」はそうだった。

 

公開のスター・ウォーズもディズニー特有のファンサービスで、ただ面白い映画に終わっているんだろうな。

そう思い、全く期待せずに映画館に向かうことにした。

 

大ヒット映画の「スター・ウォーズ」となると、公開一週間経ってもまだ映画館は混み合っていた。

 

目の前に広がる巨大なスクリーンを前に、これから始まる銀河系の物語に思いを馳せているうちに、映画が始まっていった。

 

有名なメインテーマが流れ、映画が始まる。

 

オープニング3分ぐらいから、妙な胸騒ぎがした。

 

なんだ、これ。

やけに絵に凝ってないか……

 

とにかく全てのシーンが美しいのだ。

 

オープニングから戦闘シーンが始まるのだが、爆発シーンやら宇宙空間を飛び交うX-ウィングの描写がとにかくかっこいい。

 

 

そして、登場人物のセリフのテンポが心地良い。

ルーカス本人が作っていたエピソード1〜6ではどちらかというとシリアスでコメディタッチな場面は少なかったが、合間合間に飛び交うジョークが挟まれていて、妙なテンポが生まれている。

 

 

あ、これやばい。

これはすごい。

 

映画を見ているうちに、どんどん私の心は物語の世界に惹き込まれていった。

 

画面全体の1カット1カットから製作者側の本気度がうかがえるのだ。

これまでのスターウォーズのビジュアルイメージを保ちつつ、新たなものに挑戦していく気合が画面から滲み出ているのだ。

 

人間、追い込まれた時に発せられる狂ったような熱量が全てのシーンに込められている。

  

脚本もとにかく新しい概念に挑戦している。

オープニングで全く無名のキャラクターを出したかと思えば、後半でその脇役が大活躍したりする。

 

映画序盤に繰り広げられる逃走劇もハラハラドキドキの連続である。

 

映画全体の染み渡る独特なテンポと絶妙なサスペンスが見ていて、

次はどうなるの? 

どんな展開になるの? と続きが気になって仕方ない。

 

 

 

そして、全てのキャラクターの物語が最後では絡み合い、ある結論に達する。

私はラスト1カットを見た瞬間、驚いてしまった。

今までにはないエンディングの迎え方だったのだ。

 

 

エピソード7と9をつなげるだけの映画では決してない、

監督の思いというか作家性が全面に現れたエンディングの迎え方だったのだ。

 

オープニングの時には気になっていたが、エンディングを見た瞬間、全てがつながった気がした。

 

この映画は全くの無名な名もなき人たちが立ち上がっていくまでの物語なのだ。

 

今までのスターウォーズのように特殊な能力を持った英雄の伝説的な物語ではなく、ごく普通の名もなき人たちが立ち上がり、希望をつなげるまでの物語なのだ。

 

 

あのラストシーンを見た瞬間、震える思いがしてしまった。

 

ディズニーの映画なのに、監督の作家性が全面に押し出されている。

 

人間追い込まれたらこれほどまでの作品を作り上げるのか! 

という狂ったような熱意がにじみ出ていた。

 

映画が終わってもしばらく立ち上がれなかった。

 

圧倒的なものを見せつけられた感じ。

 

徹底して計算され尽くした脚本と、圧倒的なビジュアルイメージに感化されすぎて、身動きが取れなくなってしまった。

 

 

正直言って、今回のスターウォーズは純粋なファンとしてなら、今までの定説を崩すような作りで、満足できない面もあるかもしれない。

 

 

それでも監督のライアン・ジョンソンをはじめとした製作者側の新しいものに挑戦する気合がトンデモなく凄かったと思う。

 

とにかく1カット1カットが凄まじい。

 

プロデューサーのキャサリンケネディーも

「全ての指揮を監督に任せる」という覚悟を持って、全責任を監督に任せていたのだろう。

 

 

通常、ハリウッドのシナリオは20人以上の脚本と共同で書いていくはずだが、

今回のスターウォーズは監督のライアン・ジョンソンが全て一人で書いている。

全責任を一人で負っているのだ。

 

 

監督はインタビューでこう答えている。

「まず飛び込むこと。もしも少し距離をとってその責任の巨大さを見たら、おそらく尻込みしてしまう。とにかく飛び込んで、没頭することだ。話はそれからだ」

 

 

 

何を始めるにしても、

「まだ、勝負の時じゃない」

「もっと練習を積んでから勝負したほうがいい」

といつも躊躇している自分がいた。

 

 

だけど、細かいことはとにかく飛び込んでから考えればいいのだ。

 

ルーカス・フィルムとのミーティングで人生を変えるような決断を迫られたライアン・ジョンソン監督の生き様と作家性がにじみ出ていた今回のスター・ウォーズに私は多くのことを学んだ気がする。