カメラを扱う人こそ、「小さく賭けろ!」を読んだ方がいい理由
「いい写真撮れるようになりましたか?」
私の写真の先生とも呼べる人から、ある日こんなことを聞かれた。
7月の真ん中に、長年欲しくて欲しくてたまらなかったsonyの一眼カメラを買った私は、最近カメラに夢中だ。
カメラを買うのに、約8か月もかかってしまった。
約20万円の出費である。
社会人1年目の私にとっては、結構覚悟がいる決断だった。
それでもどうしてもカメラが欲しい。
フリーター時代からコツコツとお金を貯め、ようやく最近、一眼カメラを手にしたのだった。
カメラを手にしてから、いろんなプロのカメラマンと出会い、社会人をしながら休日に写真を楽しんでいる人とも出会った。
自分が働く会社の中でも、プロ級に写真が上手い人がたくさんいた。
私が今、勤めているのは映画用のカメラを扱うメーカーである。
普段は営業としてハイスピードカメラを売るべく走り回っている。
やはり、カメラを扱うメーカーなので、妙に写真好きの人がたくさん集まっていた。
Instagramの世界で一万人以上フォロワーがいる、ネットの世界では結構有名なストリートフォトグラファーもいた。
毎日、常に浮き沈みの激しい性格の私にとって、カメラと出会えたことは幸運だったのかもしれない。
カメラを手に取るようになって、毎日、何気なく見ていた風景が色鮮やかに見えるようになったのだ。
いつも死んだ目で満員電車に乗っていたが、渋谷の駅一つ見ても、ファインダー越しに見たら、新しい風景が広がっていた。
シャッタースピードを変えて、世界を見渡してみると、違った風景が広がっていた。
こんなにも世界は光で溢れているのか……
カメラを手にしてから私の世界を見る目は大きく変わった。
毎日、通勤するまでに写真を撮って、家でレタッチなどの作業をして、休日になるとプロのカメラマンが集まっている撮影会などにお邪魔するようになった。
写真を撮りまくる毎日を送る中、写真の先生とも呼べる人にこう相談することにした。
「いい撮影ポジションを見つけられても、何回か試し撮りをしてしまう。何ショットか撮ってから、いい写真を選んでいく感じで、一発で決めてになる写真を撮れないんです……」
こんなことを相談したのだ。
すると先生は、
「何枚か試行錯誤はしていいんです。失敗することでいい写真が生まれてくるんですよ」
私はこの言葉を深く考えてしまった。
プロのカメラマンはある程度いい被写体を見つけたら、ズバッと決めてになる写真を一発で撮っていると思っていたが、何枚か試行錯誤してからいい写真を一枚選んでいるようなのだ。
もちろん全てのカメラマンがそうだというわけではないと思う。
しかし、写真を撮りながら、いい写真を選んでいる感じが自分にはした。
なるほど、何度でも失敗してもいいのか……
そんなことを考えていた時、ふとこの本と出会った。
「小さく賭けろ!」である。
ずっと前からこの本は気になっていた。
世界を変えた人と組織の成功の秘密……と書かれたサブタイトルに目が行き、本屋に立ち寄るたびに気になって仕方がなかったのだ。
グーグル、ピクサー、アマゾン、スターバックスなど、世界を変えていった組織が実践してきたことがこの本の中には書かれているというのだ。
一体どんな内容なのだろうか……
気になって仕方がなかったので、私は本屋でその本を買い、通勤電車の中で読んでいくことにしたのだった。
読み始めると止まらなくなった。
なんだこの面白い本は!!!
なんで今までこの本と出会わなかったのか!
私は基本、本を読んでいるうちに、重要だなと思ったページは折り線をつけるようにしているのだが、この本を読んでいる時は、すべてのページに折り線を入れる必要が出てくるくらい、重要なことがすべてのページに書かれてあったのだ。
そうか!
成功する企業はこんなことを考えて、実践してきたのか……
そして、何よりもこのビジネス書が面白いのは、ビジネスの世界に通じる話でなく、クリエイティブの世界でも通じる話が盛りだくさんに入っているのだ。
最初の「はじめに」のページに書かれているのは、有名なコメディアンの話である。
アメリカで何十年もコメディアンとして活躍し続けている彼が実践しているある方法。
それは、ピクサーでもアマゾンでも経営者が実践している方法と一緒なのである。
クリエイターとして、または経営者として成功する人が実際にやってきた方法がこの本に網羅されているのだ。
そして、プロとアマチュアの決定的な差を生み出す「即興」についてもこの本の中には書かれてあった。
アマチュアのカメラマンやうまくいかない経営者は、いいアイデアが生まれてからでしか、行動に移せない。
しかし、常に最前線で活躍するクリエイターや敏腕の経営者ほど、その場その場で、「即興的」に問題を解決していく能力が身についているという。
私はこの本を読むまで、世界を変えていったアマゾンやグーグルなどの会社は、
経営者が素晴らしいアイデアを思いつき、それを実践していったのだと思っていた。
しかし、違うのだ。
走りながら、試行錯誤を繰り返し、小さな失敗を重ねていきながら大きくなってきたのだ。
この本の中には何度も何度も繰り返しこう書かれている。
「みんな小さく賭けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返してきた!」
ビジネスの世界でも、クリエイティブな世界でもこの「小さく賭ける」ということは重要なのかもしれない。
カメラもいいなと思ったポジションでも、何度も失敗し、試行錯誤を繰り返し、自分の中に描いた絵を見つけていく。
失敗を繰り返すことで、徐々にいい写真を撮れるまでのスピードが速くなっていく。
そんな気がするのだ。
私はこの本を読んでいる時、もちろんビジネス書として、またクリエイティブな本として、多くのことを吸収できたと思う。
どの分野で活躍している人も皆同じことを言っているのかもしれない。
何事も「小さく賭けろ!」と。
紹介したい本
「小さく賭けろ!」 ピーター・シムズ著 日経BP社