ライティング・ハイ

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就活の時に選ばれなかった方のあなたへ

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「自己分析なんて時間の無駄です」

就活が本格的に始まる前に、とある就活生向けのセミナーに行った際に、講師の方が何度も言っていた言葉だった。

 

「自己分析をしている暇があったら、自分にあった会社を探すほうがいい。皆、ブランドを求めて大手企業ばかり受けてしまう。日本には優秀なBtoB企業や中小企業がゴロゴロある」

そんなことを言っていた。

 

私はその時、大学3年生で就活のことを全く知らなかった。

就活を経験した先輩によると、就活はどうやら地獄らしいのだ。

並大抵の努力ではうまくいかないという。

 

「大手病にはならないようにしてくださいね」

就活セミナーの人はそう言っていた。

私はその時の話をスルーしていたと思う。

自分なら大手だろうがどこだろうが受かるっしょとあまい考えを持っていたのだ。

 

私が行きたかったのはマスコミ業界だった。

テレビや広告代理店という華やかな世界に入りたいと思っていた。

 

ひとまず情報収集のためにと思い、大学のキャリアセンターに通うことにした。

自己PRを書いてはキャリアセンターの人に見てもらい、いろんなアドバイスをもらったりしていたのだ。

 

「この一行目はもっとわかりやすい言葉で」

「もっといい感じのフレーズ考えましょう」

就活が本格的に始まる3月解禁までにある程度、自己PRやエントリーシートを用意していたら、なんとかなるだろうと思っていた。

 

私は性格的にクソ真面目な部分もあるので、就活も事前準備をなるべく早くにやり始めていたのだ。

就活関連の本を読んで、自己を磨いていくなんだかよく分からない本を読んだり、コミュニケーション能力を磨く本を読んだりしていた。

 

そして、待ちに待った3月解禁の日が来た。

私はこれまで事前準備していた大企業のリストを見ながら就活サイトを開いてエントリーしていこうと思っていた。

 

解禁されたと同時にサイトはパンク状態だ。

一斉に何万人という人がエントリーし始めるのでネットになかなか繋がらなかった。

 

それでも時間をおきながら、私は自分が行きたいマスコミ関係の企業を受けて行った。

エントリーしては、説明会に行き、エントリーシートを書く。

その繰り返しをしているとあっという間に4月も過ぎていった。

 

気がついたら自分の周りには内定をもらえた人がチラホラ現れるようになってきた。

 

「〇〇っていうベンチャー企業から内定出たんだよね」

たまに行く大学の授業では、就活生同士の内定先自慢合戦が行われていたのだ。

みんな一つ内定をもらえただけで、どこか余裕ができたせいか、イキイキと就活のことを喋っていたのだ。

 

そんな人たちを見て、私は焦っていた。

私は内定ゼロだったのだ。

 

マスコミ関係を中心に受けていた。

テレビ局や広告代理店を、何十社か受けていたらどこかは受かるだろうと思っていた。

テレビ局となると倍率1000倍の世界だ。

 

普通ならそんなところ受かるはずがないと思うだろう。

しかし、就活をしていると自分が選ばれた人間になりたい一心で、目の前のエントリーシートに必死になって、倍率のことなど気にしなくなるのだ。

 

1万エントリー中、内定者はわずか13人。

マスコミ就活はそんな世界だった。

それでもみんな、憧れのテレビ局や電通に行くために必死こいて自分を見繕い、面接に挑んでいた。

 

集団面接の場になると、スーツケースを持って全国行脚している人も多く見かけた。

 

私はそんな人たちを見て、自分ならどこか受かるだろう……そんな淡い期待を抱いていたのだ。

自分は人と違う何か持っている。

そんな傍観者の目線を持っていたのだと思う。

 

結果的に30社以上、ほぼ全て落ちた。

 

 

何で自分は選ばれないのか……

そう思い悩んでは私は鬱状態になっていた。

 

6月まで内定がゼロ状態で私は本当に焦っていたのだと思う。

3月で解禁され、ほとんどの会社が4月までにエントリーシートの受付を締め切るため、皆自分が受ける会社をわずか1ヶ月以内で決めなけらばならないのだ。

 

就活はわりと無茶苦茶な制度だ。

就活サイトには3万社以上情報があるのに、そこから受ける会社を選ぶとなると自然と名前を知っている大手企業に人が集まってくるのもわかる。

 

私はずっとマスコミ業界を受けていたために、中小企業などもほとんど受けてこなかった。気がついたらほぼエントリーの受付が終了していたのだ。

 

私はノイローゼになりながらもそれでも就活を続けていた。

負け組にはなりたくない。その一心だった。

たかが就活なのに……と思う人もいるかもしれないが、実際に就活をしていると本人には尋常じゃないストレスがかかってくるものだ。

毎日のように飛び交うお祈りメールを見ているうちに、自分は社会から必要とされてない存在に思えてきて、とんでもない劣等感を感じてくる。

 

行き先真っ暗闇の中をひたすら走り回る感覚だった。

私は結局、とあるテレビ番組制作会社に内定をなんとかもらえた。

しかし、ずっとこのままでいいのか?

そんな思いはあった。

 

だけど、他に行き先もなかったので仕方なくその会社に入ることにした。

 

会社に入ってからは本当に大変だった。

4日寝れないこともざらにあり、毎日会社の床で寝ては死ぬほど働いた。

 

テレビ局の中に入っていくと私と同じ新入社員が意気揚々と食堂で食べている姿を見かけた。

 

テレビ局員と制作会社となると年収も3倍以上違ってくる。

入った会社によってその人の人生もガラッと変わってきてしまうのだ。

 

なんで自分は夜中の4時まで働いて、テレビ局に入れた彼らは夕方7時には帰れるのか……

同じ時期に大学を出たはずなのに、なんでこうも扱いが違うのか。

私は社会の厳しい現実を見て、半ばノイローゼになっていた。

 

人間、4日も満足に寝れないと頭がおかしくなってくるものだ。

度重なるストレスで私はノイローゼ状態がずっと続いていた。

一度人身事故を起こしかけ、さすがにヤバイと自分でもわかった。

 

久しぶりに会った友人には「お前死にそうな顔だけど大丈夫か?」と言われた。

2ヶ月で8キロも痩せた私の体が、もはやボロボロだったのだ。

 

結局私は会社を辞めることにした。

上司に辞めると行った記憶がないほど、ノイローゼ状態だ。

それから家に閉じこもり動けなくなった。

 

なんで自分は弱い人間なのか……

 

思い返せば、私は就活に失敗したという劣等感が心のそこであったのだと思う。

なんで私はあの時選ばれなかったのか。

テレビ局員として選ばれたらこんなことにはならなかったのに……

派遣会社や下請け会社、大手企業など入った会社によって扱いや年収がガラッと変わる社会に嫌気がさし、私は動けなくなってしまった。

 

そんな人生どん底の時にこの本と出会った。

「面接で泣いていた落ちこぼれ就活生が半年で女子アナに内定した理由」

作者の霜田さんを私は知っていた。

大学3年生の時に就活本を読み漁っている時に、マスコミ就活についてよく書いていた霜田さんの本を何冊か読んでいたのだ。

 

著者の霜田さんも就活で苦労した人だった。

2年連続でアナウンサー試験を受けるも全て敗北。

結局、無内定のまま大学を卒業し、世の中をさまよっているうちにマスコミ就活には失敗したが、マスコミ就活に詳しくなった自分に気がつき、就活で苦しんだ経験を本に書いた人だったのだ。

 

私は何かに惹かれるようにして霜田さんが書かれたその本を読んでいくことにした。

就活についての本と思っていたら、コミュニケーションについての本だった。

 

コミュ症の私には驚くようなコミュニケーション能力の小技がそこには書いてあった。

多分、霜田さん自身、毎日のように面接に挑み、就活という名のよくわからないゲームをしているうちに、自然と面接官を惹きつけるフレーズやコミュニケーション能力を身につけていったのだろう。

 

私はなるほどと思いながらその本を読んでいったと思う。

 

そして、最後のまとめの部分で私は思わず泣きそうになってしまった。

それは就活というゲームに敗北しながらも懸命に闘ってきた霜田さんだからこそ書ける言葉だった。

 

「この世にはすごい星に生まれた人と、すごくない星に生まれた人がいる。倍率1000倍の世界でも何か人と違う素質を持った人はきちんと選ばれていく。すごくない星に生まれた人はどうもがいてもすごい星に生まれた人間には勝てないのかもしれない。

 

だけど、すごくない星に生まれた人でも、すごい星に向けた距離が遠く離れているほど移動のためにパワーが生まれて、輝きを放つことができる」

 

 

確かに世の中にはすごい星に生まれた人がいると思う。

テレビ局員になれた同級生たちはその類の人だろう。

 

私のようにすごくない星に生まれた人間はどうすればいいのか? とずっと思い悩んでいた。

しかし、すごくない星に生まれたからこそ、努力すれば人一倍最高の輝きを放てるのではないか?。

 

私はずっと就活の時に選ばれなかったのを悔いていた。

しかし、選ばれなかったからこそ、選ばれた人よりもいろんな光景を見てこれた気がしてきた。

よく考えたら、自分がライティングの魅力に気がつけたのも、会社を辞めて世の中をさまよっている時だった。

 

 

がむしゃらに目の前のことに夢中になって努力していたら、就活で選ばれた勝ち組の人にもいつか追いつける。

そんな気がするのだ。