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ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

アイルランドの少女の恋物語である映画「ブルックリン」を見て、今のアメリカが抱える問題について考えさせられた

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「あの橋の向こうには何があるんだ」

私はブルックリン橋を見ながら、そう思っていた。

 

大学生の頃、私は世界の中心を見てみたいと思い立ち、アルバイト代で金を貯めて、

一週間ほどニューヨークに行ったことがある。

 

マンハッタン島は驚きの連続だった。

本当に人種のるつぼなのだ。

3ブロックほど歩いたら、ガラッと建物から道路から聴こえてくる言葉も変わってくるのだ。

イタリア系からドイツ系、ユダヤ系、エジプト系、インド系、中国系、アフリカ系……

世界中すべての移民で構成されている街がマンハッタン島だったのだ。

 

本当にマンハッタン島を歩くのは刺激的だった。

私は約9時間ほどかけてマンハッタン島を南から北まで歩いてみたが、その島を一周することは、世界を一周することになるのだ。

ちょっと歩いたらドイツ系の移民が集まる街になり、また少し歩いたらイタリア系の移民が集まる街になる。

 

街の風景がコロコロ変わり、普通に歩いているだけで面白い。

世界中の人々を見ることができるのだ。

 

そんな中、休憩のために川沿いで休んでいると、マンハッタン島から見渡せるブルックリン橋が見えてきた。

あの向こうにはどんな移民の街になっているのだろう……

私はそんな思いに耽っていた。

 

私は結局、時間がないのでブルックリンには行けなかった。

それに夜は治安が悪いという噂を聞いていたので、近づきずらかったのだ。

 

ニューヨーク旅行から2年以上経っても、

あの時、ブルックリンを見ていればな……という思いはずっとあった。

古い煉瓦が並び、とても雰囲気がある街だと聞いていた。

 

アメリカ映画を見ていると、よくブルックリンの街並みが登場する。

アン・ハサウェイなど有名な俳優や女優はブルックリン出身の人が案外多いのだ。

スパイダーマンが暮らす街も原作ではブルックリンだ。

 

映画を通じてブルックリンを見ているうちに、私はやはり後悔をしてしまっていた。

あの時、時間がなくてもブルックリンを見ておけば……

やはり、どこかブルックリンに憧れる自分がいたのだ。

 

 

そんな時、いつものようにTSUTAYAを徘徊していると「ブルックリン」というタイトルの映画を見かけた。アカデミー作品賞を取った映画なので、私もタイトルだけは知っていた。

しかし、どんな内容の映画なのかは知らなかった。

私はいつも前情報を固めてから映画を見る癖があるのだが、今回だけは全くの知識なし状態で映画を見てみることにした。

 

ただ、ブルックリンが舞台の映画なのだということ以外に知識がなかったのだ。

 

映画を再生し、本編が始まった。

 

とにかく映像が綺麗だ。

1950年代のブルックリンの姿がそこにはあった。

 

マフィア映画などでよくブルックリンが登場するので、その街並みの美しさはだいたい知っていたが、ここまで綺麗な煉瓦が並ぶ街だとは思わなかった。

 

そして、私は本編を見ていくうちにずっと気になっていたことがあった。

それは、なぜ製作者はこの映画を撮ったのか? ということだった。

 

アイルランド系移民の少女がニューヨークのブルックリンにやってきて、悪戦苦闘する物語なのだが、どうも背景に凄い深いことが描かれている気がしてならなかった。

 

ただ移民の少女が成長していく物語には思えなかったのだ。

私は映画の中盤、ブルックリンにやってきた少女が教会でホームレスたちに炊き出しをしているシーンがとても脳裏にこびりついていた。

 

教会の神父さんは

「この人たちが今のアメリカを作ったんだ」

そう語っていた。

 

なぜ、純粋な少女がブルックリンで成長する物語にそんな描写を入れるのだと思ってしまった。

そして、アメリカ全土にいるアイルランド系の移民にはどんな歴史があるのか気になってしまったのだ。

 

私は正直いうと、世界史には疎い、

大学受験も日本史で乗り切ったため、世界史についてはどうも苦手意識を持っていた。

そして、何よりイギリスの領土問題のことをよく知らなかった。

アメリカ映画やイギリス映画を見ていると、アイルランドスコットランドの抱える問題がちらほら描かれている。

 

映画「タイタニック」でもセリフの中で、

「この船を作ったのはスコットランド人さ」など比喩する言葉があるのだ。

映画「トレインスポッティング」でもスコットランド出身のショーン・コネリーをやたら尊敬している描写があったりする。

 

アイルランド系とスコットランド系の移民が抱える問題がよく映画に出てくるのだ。

私は久々に世界史の教科書を開き、ネットなども使って色々調べてみた。

高校の時、きちんと世界史を勉強していればと思った……

 

そして、映画「ブルックリン」がアカデミー賞でもやたらと評価されている理由も見えてきた。

 

これはアメリカ社会が抱えている公共事業の問題を描いた作品だったのだ。

イギリス本土から外されたアイルランドの人々の多くが、自由を求めてアメリカに渡って行ったという。アメリカに渡った彼らは、元からいた白人達がしているホワイトカラーの仕事にはつけなかったため、仕方なく土木工事の仕事についていたのだ。

 

しかし、アメリカの高度経済成長が進むにつれ、工事も終わっていき、雇われ労働者だったアイルランド系の移民は職を失ってしまうことになる。

 

教会の神父さんが言っていた言葉の意味はそれにあるのだ。

アイルランド系の移民がアメリカを作ったのに、事業が終わるにつれ、職を失ってしまったのだ。

 

去年公開されたこの映画がやたらと評価される理由もそこにあるのだと思う。

アメリカ大統領選でトランプを支持している人たちの多くが、このアイルランド系の移民たちなのだ。

自由を追い求めてアメリカにやってきたのに、公共事業の問題から職に就けず、アメリカの隅っこに追いやられたアイルランドをはじめとした移民たちがトランプ支持に回ってきたのだ。

 

 ブルックリンという街はそんな移民たちが暮らす街も象徴しているのだ。

おしゃれなカフェなどで賑わっているが、今も貧しいアイルランド系移民の多くがブルックリンという地で暮らしているという。

 

映画「ブルックリン」は、アイルランド系の少女が恋を通じて成長していく物語だと思って見ていたら、アメリカが抱えている移民や公共事業の問題を描いた傑作映画でもあったのだと気づいた。

 

この映画を見て私は、もっと世界のことを知らなければいけないなと痛感したのだった。