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ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

「魔法少女まどかマギカ」を見て、今は亡きスティーブ・ジョブズの伝説のスピーチを思い出した

アニメ

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「大人になってからもまどかマギカだけは見たほうがいい」

ある人がこう言っていた。

 

まどかマギカ?」

あの魔法少女が出てきて、なんだかよくわからない敵を倒すものか?

私はそのアニメにそんなイメージを持っていた。

プリキュアセーラームーンみたいなアニメを大人になってから見てどうすんだ? と思ったのだ。

 

しかし、その人がフェイスブックで「まどかマギカ」についてコメントすると、多くの人から反応があった。

 

まどマギだけは凄すぎる」

「あのアニメは大人が見るべきですよね」

「間違いなく世界に通じるコンテンツですよ」

私のフェイスブックのタイムラインは一時期、まどマギで埋め尽くされていた。

 

そんなにまどマギって面白いのか?

私はもちろんそのアニメのことを知っていた。

5年くらい前に話題になったアニメだ。

ちょうど震災があった時に放送されていたため、一時期放送中止になっていたが、あまりにもファンの声が多かったため、急遽3話独占放送が決定したそうだ。

 

私の周りにも「まどマギ」が好きだという人が多かった。

私はなんでいい年した大人が美少女モノのアニメにハマるんだと思っていた。

 

私は「セカイ系」というジャンルのアニメが大の苦手だった。

新海誠の作品も素晴らしいと思うが、世界観についていけなくなるのだ。

 

攻殻機動隊」も電脳セカイの話になった途端、ついていけなくなった。

涼宮ハルヒ」も途中で話が壮大になりすぎて、頭を抱えながら見ていた。

 

どうやら「まどかマギカ」もそのジャンルに入るアニメのようだった。

たぶん、ハマらないんだろうなと思っていた。

これまでみたいに、途中で挫折するんだろうなと……

そう思っていたため、「まどマギ」だけには手を出していなかった。

 

 

まどかマギカだけは大人になってからも見たほうがいい。クリエイターとしてのコンテンツを学びたいと思うなら、間違いなくこのアニメは見たほうがいい!」

 

私のフェイスブックを通じて、多くの方がそんな声をあげていた。

そんなに面白いのか?

間違いなく2010年代のナンバーワンアニメだろうが、そこまでハマるとは思えなかったのだ。

 

私はどうしても「まどかマギカ」が気になってしまい、レンタルショップでDVDを借りて、見てみることにした。

はじめは3巻分を借りて見始めた。

たぶん、途中で飽きると思ったのだ。

 

前情報によると、どうやら3話目でトンデモナイ展開があるらしい。

「3話までは耐えろ」と聞いていた。

 

本当に面白いのかな……

というか24歳にもなって、可愛らしい美少女の絵柄が描かれたパッケージのDVDをみることに躊躇していた。親にバレたら恥ずかしかったのだ。

 

DVDを再生していった。

はじめの方は普通のアニメのように思えた。

可愛らしい女の子たちが出てきて、なんだかよくわからない魔女と戦う物語だ。

 

私は1話目の終わりごろから、薄々感づいた。

このアニメ普通のとは違う……

なんだこのざわつき感は。

なぜか妙に胸にチクチクするのだ。

 

そして、問題の3話目にやってきた。

3話を見ていくと、後半あることが起こるのだ。

その出来事を見た瞬間……

 

「あああああ!!!」

と思わず叫んでしまった。

 

なんじゃこのアニメは。

私の手は震えていた。

面白すぎる。というか斬新すぎる。

 

私はそこから止まらなくなっしまった。

4話目から一気に見てしまったのだ。

 

どんどん物語が進むにつれて、魔法少女たちの残酷な運命が明かされ、私の胸はチクチクと痛みを感じていた。

なんだこの胸に刺さるような痛みは!

 

私はすぐにレンタルショップに走り、残りの巻全てを借りてた。

8話を超えたあたりから、なおさら、ものすごい展開になっていくのだ。

 

まだ続くのか……

こんな面白い話がまだ続くのか。

 

そして劇場版のラストを見た瞬間、思わず呟いてしまった。

エンドロールの中で、二人の少女が暗闇に走っていく姿を見て、こう呟いてしまったのだ。

「感無量……」

間違いなく天下一品のコンテンツなのだ。

トンデモなく面白いアニメだったのだ。

 

新海誠の「君の名は。」を見て、泣けなかった私でも「まどかマギカ」を見て、泣きそうになっていたのだ。

 

なんだこの胸にくる痛みは……

なんで少女たちが魔女と戦うアニメを見ているのに、こんなにも胸が痛いんだ。

私はそう思った。

 

まどかマギカ」は従来の魔法少女モノの概念を覆した傑作だと言われている。

プリキュア」や「魔女の宅急便」のキキは、裏ではこんな契約を交わしていただろうという内容をアニメ化したものが「まどかマギカ」なのだという。

 

中盤から昼ドラ並みのドロドロした展開になるのだ。

タイトルからくるイメージと、内容が全然違うじゃん!

私は見ていて、ずっとそう思っていた。

 

人間誰しもが持つ「穢れ」というものを描いた傑作アニメなのだ。

人間の欲望や希望を抱いた代価として失っていくものを描いた傑作だった。

 

間違いなく何十年と語り継がれるアニメだと思う。

 

このアニメを作った人は誰なんだ。

私はそう思って、自分なりに調べてみることにした。

映画ならこの人にお任せの町山智浩さんもwowow映画塾でまどかマギカについて

1時間以上熱く語っていた。

 

それだけ語っても語りつくせないアニメなのだと思う。

あまりにも深すぎて、それだけ語ってしまうのだ。

私は町山さんの解説を聞いていった。そして、自分なりに考えていった。

 

このアニメがすごいところ。

もちろん映像表現が斬新だったという部分もある。

深夜アニメだから低予算で作られているため、コマをあまり動かせない。

だからだろうか……

魔法少女と契約を結ぶキュウべえは可愛らしい容姿なのに、全く口が動かない。常に無表情なのだ。それがまた後半の展開で、キュウべえがトンデモないやつだとわかって、無表情でいるのが怖くなってくる。

 

戦闘シーンも斬新だった。

劇団イヌカレーが手がけた異空間演出は必見だ。

あんな戦闘シーンは今まで見たことがなかった。

 

そして、何よりも私が気になったのは、この物語を作った脚本家の方だ。

この壮大な物語を作った脚本家はどんな人なんだろうと思った。

 

調べてみると、やっぱりなと思った。

やっぱりあれをイメージして「まどかマギカ」を書いたんだ……

私はしっくりとくると同時に、胸がチクチク痛くなった。

 

まどかマギカ」を見ていて、常に感じたあの胸の痛みはやはりあれだったんだ。

 

 

このアニメを作った脚本家の方は「エロゲー」出身の方だった。

ずっと見ている時に感じていた痛み……

それは大島渚の「愛のコリーダ」や「ラストタンゴ・イン・パリ」など人間の欲や性について描いた映画を見ている時に感じたものと似たものだったのだ。

 

日活ロマンポルノなどの人間の欲望や愛を描いた作品は、望みを叶えられると同時に、残酷な運命が待っているという展開がよくある。

愛が深くなればなるほど、残酷な運命が待っているのだ。

人間の欲や営みを描いたそういった作品はなぜか最後は報われない展開になる。

 

私は「まどかマギカ」の背景には、そういった人間の営みや欲についての物語が隠されているのだと思う。

人間が持つ「穢れ」について深く描かれた傑作なのだ。

 

世界的に見ても、清らかなものほど、穢れているという考え方がある。

日本においても風俗嬢の元祖は神社の巫女さんだ。

キリスト教においても、マグダラのマリアは娼婦だったという説がある。

 

少女たちは清らかな存在だが、それと同時に穢れをまとった存在と描かれることが多い。

 

まどかマギカ」もそんな人間が持つ「穢れ」を描いた物語なのだ。

 

私は爆笑問題のラジオで、まどかマギカの脚本家虚淵玄さんが出演した回を聴いてみることにした。

さすがラジオだ。

あまり公ではわからないところも話してくれていた。

 

あの残酷でドロドロのアニメを作った人だから、脚本家の人もどこかちょっと怖いイメージがあったが、声からくる印象はどこかのほほんとしていて、親しみの持てる人のように思えた。

 

あの壮大で複雑な物語を書いた人だから、メフィストキリスト教の聖書について深読みしているのだろうと私は思っていた。

しかし、実際は

「全然わからいっす。メフェストなんて読んだことないっす」

と言っていた。爆笑問題の太田さんは「え? そうなの」と驚いていたようだ。

 

それじゃ、なぜあのようなドロドロして深いアニメを書けたのだろうか?

と私は思ってしまった。

 

「細かい部分はアニメーターの人に任せたんです。私は骨格の部分を書くことだけに集中していきました」

そのようなことを虚淵玄は語っていた。

 

脚本家の虚淵さん曰く、まどかマギカの会議は驚きの連続だったという。

なんと毎回、脚本会議が5分で終わったという。

 

「え? こんなんでいいの?」

と本人も思っていたらしい。

 

そして、自分が書いた脚本がそのままラフとして出来上がっていく様を見て、驚いたという。

自分が好き放題書いたものが、誰からの訂正もなく、そのままアニメになっていくのだ。

監督に気になって聞いてみたようだ。

すると……

「アニメ慣れしていないライターさんに好き放題書いてほしい」

そう監督に言われたらしい。

 

 

 

「本当に好き放題書かせてもらいました」

虚淵さんは語っていた。

 

「自分はエロゲー畑出身なんですけど……そういったアダルトモノの中では、少女が酷い仕打ちを受ける展開はよくあるんです。メジャーな魔法少女モノのアニメでそれをやってみたんです。自分が得意としていたマイナーなものを大衆向けに書き換えていった感じです」

 

虚淵さんは「地元の料理をマンハッタンで出したら大ヒットした感覚」

と言っていた。

 

エロゲーやアダルトモノは一般的にあまり評価されるものではないだろう。

虚淵さん本人はどう思っているのかわからないが、マイナーなものでも自分が興味を持って突き詰めてやっていたら、いつの間にか大衆向けのアニメを作る際に役に立っていたのだと思う。

 

時代を変えていくようなものを作っていく人は、いつも業界の外からやってくるのかもしれない。新海誠も元々、普通の会社員をしていた方だった。アニメーター出身の方ではないのだ。

 

私は虚淵さんの話を聞いていると、ある人が残した伝説のスピーチを思い出していた。

 

ある人とは……

スティーブ・ジョブズだった。

 

ジョブズは大学の授業に嫌気がさし、親が貯めた金を無駄遣いしているようにしか思えず、すぐに大学を中退してしまっていた。

その時はどうしようかと悩んでいたらしいが、今となっては最良の選択だったと思っているという。

 

中退したジョブズがしたことは、自分が聞きたいと思った講義に潜り込むことだった。

その時、ジョブズが夢中になったのはカリグラフィーだ。

書体や文字間隔の手法はどうしたら美しくなるのかを講義に潜り込んでは学んでいったらしい。

美しく、歴史があり、科学では捉えきれない繊細な世界だったとジョブズは語っている。

その時は、これが何の役に立つのかはわからなかったという。

ただ、自分が興味があるものを学んでいっただけなのだ。

 

10年後、マッキントッシュの開発時にそのカリグラフィーの知識が多いに役立った。

パソコン画面に複数フォントや時間調整フォントを付け加えたのだ。

 

もし、ジョブズが大学を中退して、カリグラフィーの講義に潜り込んでいなければ、今のパソコンは美しい文字やデザインが反映されていなかったのかもしれない。

 

ジョブズは最後に学生に向けてこう投げかけていた。

「点と点はいつか繋がる。たとえ、その時は無意味に思えても、いつの日か繋がって、役に立つ時が来る。たとえ、それが皆が通る道でなくても、いつの日か大きな違いをもたらしてくれる」

 

 

ジョブズは点と点が繋がってIT業界を変えていったように、あのアニメも点と点が繋がって世界に影響を与えるようなコンテンツになったのだと思う。

 

もし、脚本家の虚淵さんがエロゲー業界の人でなかったら、あれほどまでに人間の深い感情を描いた傑作アニメは作れなかったと思う。

 

世間的には評価されなくとも、自分が興味を持って取り組んできたことが、点と点が繋がって、いつしかメジャーな大衆向けのアニメへと生まれ変わったのだ。

 

私は「魔法少女まどかマギカ」を見て、そんなことを思った。

 

今の仕事はたとえ、世間から評価される仕事ではないかもしれない。

自分が好きな仕事ではないかもしれない。

しかし、点と点はいつの日か繋がるものなのだと思う。

10年かかるかはわからない。しかし、きっと役に立つ時が来る。

 

今は役に立たなくても、世間から評価されなくても、自分が取り組んできたことは、いつの日か役に立つ。

 

そんなことを教えてくれたアニメでもあった。