ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

世界を震撼させたエドワード・スノーデン事件のことを考えると、私はどうしても「キャプテン・アメリカ」のことを考えてしまう

 

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「世界を信じた、純粋な裏切り者」

彼はよく、こう称されていた。

米国最大の秘密を暴いた男。

彼のことを犯罪者と呼ぶ人もいれば、英雄と称する人もいる。

 

彼の名はエドワード・スノーデン

NSA(米国国家安全保障局)で勤務していた彼は、政府が国民を監視していたという事実をメディアで暴露し、大論争になったニュースは多くの人の目にも触れたと思う。

 

私もそのニュースは知っていた。

しかし、パッと身近な話題には思えなかったのだ。

政府が、人々の通話利用やインタネット利用状況を全て把握できるということに脅威を感じつつも、へ〜と思ってスルーしていた気がする。

 

政府が国民を監視できる状態。

それが危険なことなのか? これが人々が望む安全なのか? 

政府がやっていることは正義なのか?

 

それを国民に判断してほしいと思い、スノーデンはこの事実を暴露したという。

私はその問題に対し、きちんと考えてこなかった。

しかし、今の時代の正義と悪の問題をきちんと考えなければいけないと思わされた

一本の映画があったのだ。

それはあたかも子ども向けのコミックを手がけていたマーベルの作品だった。

 

 

アベンジャーズの続編でしょ!」

私はそんな思っていた。その映画はノーマークだった。

アメリカの正義を貫いた男「キャプテン・アメリカ」の最新作は当時、米国内で

大大大ヒットしていた。

アメコミ映画の傑作と称されていた。

 

私は正直に言うとアメコミ映画が大の苦手なのだ。

数年前にメガヒットした「スパイダーマン」も特殊能力を身につけた主人公に感情移入できず、物語から置いてけぼりにされてしまったことがある。

 

ウルトラマン」などの超人シリーズがどうも子供の頃から苦手なのだ。

こんな超人能力あるわけがない!

こんな人がいるわけない。

と子供のくせにそんな目線で映画を見ていたのを覚えている。

 

マーベルの最新作も同じようなものだと思っていた。

確かに「アイアンマン」や「アベンジャーズ」はめちゃくちゃ面白い。

 

「日本人よ! これが映画だ」

というキャッチコピーで日本人の心をワシ掴みにして、メガヒットしていた。

私も純粋に面白いと思った。

 

ヒーローが集結して一つの強大な敵に立ち向かっていく姿は純粋に燃えた。

アベンジャーズかっけえー」と思って映画を見ていた。

 

しかし、それの続きに当たる「キャプテン・アメリカ」シリーズはどうも見る気がしなかったのだ。

いつでも観れると思って、先のばしにしていた。

 

そんな時にふと、いつも楽しみにしている映画評論家の町山智浩さんのラジオを聴いていると、町山さんがやたらと声をあげて大絶賛している映画があった。

それが「キャプテン・アメリカ」の最新作だったのだ。

 

 

「こんな政治色が強い映画は見たことがない!」

町山さんはそう語っていた。

 

「アメコミ映画なんだけど、とても政治色が強いんです」

 

私は何のことかよくわからなかった。

あの「キャプテン・アメリカ」が政治色が強い?

子ども向けのエンターテイメント作品だろと思っていたのだ。

 

「映画全体が今のアメリカを象徴しているんです。オバマ政権の裏であったことを映画を使って痛烈に表現してて、見ててぶったまげました」

と語る町山さんの声に動かされて、私はその「キャプテン・アメリカ」の最新作を

ブルーレイで借りてみることにした。

その時はレンタルビデオ屋でも最新作扱いだった。

私は基本的に映画を借りる時は最新作のものを借りない。

数ヶ月すれば準新作扱いに降りて、値段が3分の2ほど安くなるからだ。

 

私はその町山さんが大絶賛していた映画を見てみることにしたのだ。

 

映画が始まる。

う?

この映画何なんだ?

 

誰が敵なんだ? と正直思ってしまった。

キャプテン・アメリカは悪の組織ではなく、なぜかアメリカ国家自体と戦っているのだ。

私は何だか壮大な物語に圧倒され、じ〜と見続けてしまった。

 

私は町山さんが問題としていた、とあるビルが映るシーンになった。

「あ!!!!」

 

本当だ。

あのビルが写っている。

世界を震撼させ、アメリカ国民が怒った政治スキャンダルが発生したビルがもろに画面に映っているのだ。

私はその瞬間、製作者の意図がわかった。

なぜ、こんなに善と悪の構造が複雑な映画を作ったのか?

子ども向けのエンターテイメント作品でなぜ、こんなにも高度な物語を作ったのか?

 

明らかにこの映画は「大統領の陰謀」をイメージして作られている。

あのウォーターゲート事件が起こったビルを映し出し、しかもキャプテン・アメリカが所属するグループのリーダーが「大統領の陰謀」で主演をしていたロバート・レッドフォードである。

 

 

キャプテンアメリカ」の最新作は、政府が国民を監視している事実を暴いたウォーターゲート事件を基にして作られているのだ。

 

しかも、この映画が公開されたのは2014年だが、その一年前にも世界を震撼させ、同じように政府の陰謀を暴いた重大事件が起こっていたのだ。

 

それがエドワード・スノーデン事件だった。

 

明らかに「キャプテンアメリカ」の最新作は、この二つの事件をモチーフにして映画が作られているのだ。

政府による国民の監視……その事実を知った時、キャプテン・アメリカがとった行動に

私は思わず唸らされてしまった。

 

どっちが正義で悪なのか?

そんな分かりやすい話ではないのだ。

 

町山さんはこう解説していた。

「これはオバマ政権の裏で起こった事実を基にして作られた映画なのです」と。

 

ブッシュ大統領の政策と反して、オバマ大統領は「戦争をしない政治」を心がけていた。実際にオバマ大統領の任期の間は一度もアメリカは戦争をしなかった。

 

しかし、その背後で多くの人々の命が犠牲になっていた。

テロリストと思われる人物をインターネットや携帯の通話記録からあぶり出し、

ドローンという無人偵察機で標的に接近して、ゲームのようにボタンひとつでミサイルを撃っていたという。

コンピューターの画面越しにテロリストを抹殺できていたのだ。

 

これはテロリストがテロを起こす前にする正当防衛だという声もあったが、

ドローンによる無人爆撃機の影響で、2000人近くの罪のない人も巻き沿いを食らっていて、行きすぎた正義だという声も多かったという。

 

テロリストがテロを起こすと数万人が犠牲になる。

しかし、テロを起こす前に無人爆撃機で抹殺すれば2000人の犠牲で済む。

何が正義で悪なのか? 

簡単に言える問題ではないと思う。

 

エドワード・スノーデンはテロリストと思われる人物をあぶり出すために全世界中の

個人情報を把握できるようなプログラムを作っていた。

これは行きすぎた正義なのか? それとも悪なのか? 

そのことを国民に問いたかったとTEDなのど公演で語っている。

自分がしてきたことに罪の意識を感じ、政府は正義を貫いているのか疑問を感じていたという。

 

キャプテン・アメリカ」の最新作もこの正義と悪の問題を描いた、とても政治色のある深い正義と悪の物語だったのだ。

 

国民の情報をすべて監視し、ピンポイントで爆撃が可能な巨大空母が稼働する前に、

キャプテン・アメリカは「これがアメリカ国家の正義なのか?」と感じ、国家に戦いを挑むことになる。

 

そこにあるのは正義なのか? 悪なのか?

そのことを問う映画なのだ。

 

ドストエフスキーが言ったように、善と悪は時代によって変わるのだ。

今の時代ではエドワード・スノーデンは国家に反逆した犯罪者という扱いになる。

ロシアに亡命し、アメリカに帰ってくることは難しいだろう。

 

しかし、数十年たったら、国家の陰謀を暴いた英雄という扱いになるのかもしれない。

 

キャプテン・アメリカ」も政府がしていることに疑問を感じ、戦いを挑むことになるのだが、彼は反逆罪扱いにされ、政府から追われる羽目になる。

 

私はこの「キャプテン・アメリカ」シリーズを見て、本当に度肝抜かれた。

現代の問題をここまで物語に込めた映画はあったのだろうか?

エンターテイメント作品を通じて、今現実に起こっている世界の問題をきちんと大人や子供達に問いかける映画なのだ。

 

とある文化人はこう言っていた。

「世界を変えていくのは宗教でも政治でもない。文化だ! 

今の大統領のことは数10年も経てば誰も覚えていない。だけど、ビートルズの曲は

100年後の人も聞いているだろう」

 

本当に世界を変えていくのは文化なのかもしれない。

 

最近、スノーデン事件を題材にした映画「スノーデン」が公開された。

間違いなく大傑作だと思う。

監督はあのオリバー・ストーン

できるだけ観客にわかりやすいように事実を追っていく構造になっている。

「スノーデン」も間違いなく現代社会に蔓延る個人情報の問題を描いた傑作映画だった。

しかし、それ以上にエンターテイメントを使って、現代に蔓延る正義と悪を問う深い

映画があるのだ。

 

キャプテン・アメリカ ウィンターソルジャー」

 

今の時代だからこそ、より多くの人が見なければいけない映画なのかもしれない。

情報が多様化して、何が正義で悪なのか判断がしづらい時代だからこそ、自分たちの頭できちんと考えなければいけないと思わされる映画なのだ。

メディア関係者の人ではなくても、是非一度はきちんと見てみて欲しい映画だと思う。