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ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

努力ではどうにもならないものを目の前にして「生きづらさ」を感じている人がいたら、あのピクサー映画は特効薬になるかもしれない

映画

 

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「ずいぶん遠くまで行ってしまったな」

 

去年の終わり、とある一本の映画を見た時に私は痛烈にそう感じてしまった。

それは大学時代の知り合いが商業デビューした映画だった。

主演は小松菜奈だった。

 

その女性監督は大学時代から業界内では話題になっていて、彗星の如く現れた天才監督と称されていた。

 

私が彼女と初めて会ったのは、とある学生映画祭だった。

その前の年に、彼女が作った映画が審査員特別賞を取り、予告編が会場に流れていた。

予告編を見た瞬間、私はこう思った。

 

「この人には勝てない」

 

彼女が持つ痛々しいまでも美しい感受性や孤独さが画面ににじみ出ていた。

痛々しくも、なぜか見る人には心地が良いのだ。

 

こんな感性の鋭い人を見たのは初めてだった。

 

私は早速、彼女に話しかけてみた。

 

彼女はパッと見る限りごく普通の女性だった。

しかし、喋ってみると、腹の中にとんでもないものを抱えていることを感じ、私は怖くなってしまった。

そして、嫉妬してしまった。

 

私が天才肌の人間と初めて会った瞬間だった。

 

その日から取り憑かれたように私は映画を見まくった。

彼女のような映画を作りたかったのだ。

人々を魅了する映画を私も作りたかったのだ。

 

図書館にこもり、脚本についての本を読み漁っては、破綻した脚本を書いていった。

自分は一介の映画監督だという誇大妄想に取り憑かれていたのだと思う。

 

私は映画の世界に閉じこもっていった。

 

その後、私は多くの人の協力のもと、死に物狂いで約60分間の自主映画を完成させた。

「これなら賞を取れる!」

と意気込み、彼女が受賞したのと同じ学生映画祭に作品を提出してみた。

 

結果は予選落ちだった。

 

なぜだ!

なんで自分が作った映画は評価されないんだと思った。

 

審査員の見る目がないのがいけない!

と自意識過剰にもなっていた。

 

私が自主映画制作でもがいていた頃、彼女はどんどん大物になっていった。

大手映画会社のバックアップのもと、アイドルを起用した短編映画を制作していった。

その短編映画も賞をもらい、雑誌にも取り上げられていた。

 

私はそんな彼女の活躍を見て、嫉妬していたと思う。

彼女の才能が羨ましかったのだ。

 

そして、あっという間に、就活の時期が来た。

私は周りに流されるように就活をして、当たり前のように社会人になることになった。

 

「大学時代のうちに頭角を出す」と意気込み、自分は就活しないと思っていた自分は

結局、時期が来て周囲と同じような道を歩むことになった。

 

私は何者にもなれなかった。

年間350本ほどの映画を見て、図書館にこもって脚本についても研究した。

しかし、才能の塊のような彼女には到底及ばなかった。

 

誰も自分の映画など見向きもしなかった。

どんなに努力しても私は彼女には勝てなかった。

 

私の努力など誰も見てくれなかったのだ。

そう思い、私は生きづらさを感じながらも、学生生活、最後の冬休みになった。

 

そんな時だった。

その映画と出会ったのは。

 

それは世界的に有名なピクサーアニメーションが作ったとある映画の続編だった。

モンスターたちが主人公の物語だ。

 

私は昔からピクサーのファンだった。

子供の頃など「トイストーリー」をテレビ画面をかじるように夢中になって見ていた。

トイストーリー2」も親に連れられて、映画館で見た。

子供だった私はおもちゃたちが繰り広げる大冒険に夢中になっていたのだ。

 

そんな私だが、モンスターたちが出てくるあの映画の続編だけはまだ見ていなかった。

その映画を見た大学の先輩はこう言っていた。

 

「これは大人が見た方が泣ける」

 

ピクサーは子供向けの映画ではないのか?

大人が泣けるとはどういうことだ? と私は思った。

 

私は早速、TSUTAYAでレンタルしてその映画を見てみることにした。

ピクサーは大好きだけど、大人になった今、ピクサー映画で泣くことはないなと思っていた。

 

その映画はちっこいモンスターと毛むくじゃらの大きなモンスターが繰り広げられる大冒険を描いた映画だった。

子供の頃に、私もその1作目の映画を見ていたが、大人になった今、その続編を見ても何も感じることはないだろうと思っていた。

 

DVDを再生して、本編がはじまった。

見ている途中、私は震えてしまった。

 

震えが止まらなくなってしまった。

 

このモンスターは自分ではないか?

 

完全に映画の物語にいる登場人物たちに私は感情移入してしまったのだ。

 

映画を見ていくうちに涙が垂れてきた。

 

そうなんだよ……

私もそのことが苦しかったんだ……

 

私は完全に物語の世界にどっぷりはまってしまっていた。

そして、ピクサーの凄さを感じた。

 

子供向けの映画にこんなことを見せつけるなんて……

 

この映画は「努力ではどうにもならないものがある」という現実を突きつける物語でもあったのだ。

 

普通、子供向けのアニメなら「努力すれば、きっと、夢は叶う」

というメッセージを子供達に伝えるはずだ。

 

しかし、ピクサーのその映画は違っていた。

「努力してもどうにもならないことがある」という現実をしっかりと子供達に伝えているのだ。

 

よく考えたら、世の中にはどんなに努力しても評価されないことだらけだと思う。

受験勉強も、何年勉強をしても、早稲田や慶応に合格できない人がいる一方、

少し勉強しただけですんなり合格できてしまう人がいる。

 

努力以上に結果が全ての世界だ。

世の中そういうものだから仕方ない。

 

仕方ないが……

幼い子供達にもその現実をしっかりと見つめさせるとは。

 

私はピクサーの心構えに感動してしまった。

本当にすごいと思った。

 

「どんなに努力しても勝てない人がいる。しかし、どんな人にも得意なものがきっとあるはず。個性は人それぞれだ」

 

ピクサーのその映画はこのようなメッセージを込めて作られていたと思う。

しっかりと子供達に現実のメッセージを伝えて、なお励ましのエールを送っているのだ。

本当にピクサーのその心構えに私は尊敬の念を抱いた。

大人になった今でもそのアニメ映画を見て私は泣けてしまったのだ。

 

確かにどんなに努力しても勝てない人がいる。

まったく才能がない私には、彗星の如く現れた彼女のような映画監督には勝てないだろう。

 

だけど、自分なりの努力の仕方がきっと眠っているはずなのだ。

 

最近、ライティングを初めてからプロのライターさんやプロ級のものを書ける人たちに会う機会がたくさんあった。

フェイスブックを開いているとプロレベルの記事が流れてきて、

「こんな記事自分は書けないよ」と劣等感を感じることもある。

自分の才能のなさに憂うことも度々ある。

 

どんなに努力しても、プロ級のライターさんには私は勝てないかもしれない。

しかし、ピクサーが映画の中で描いたように、自分なりの努力の仕方がきっとあるはずと信じて、今日も私はライティングに励んでいる。

 

努力だけではどうにもならないことは世の中にはたくさんある。

しかし、「モンスターズ・ユニバーシティ」にいたマイクやサリーのように、

目の前の努力を怠ってはいけないのだ。