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ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

世界一の絶世の美女が、14キロ増量して連続殺人犯を演じた理由

 

「バン!」

彼女は呆然と立ちすくしていた。

 

目の前で脳天を打ち抜かれた父親が横たわっていたのだ。

 

銃を持って泣き崩れる母親が目に入った。

今さっき、母親が自分の父親を銃で撃ち殺したのだ。

 

何が起きたのかわからなかった。

どうすればいいのかわからなかった。

 

発狂寸前の彼女を母親は抱きかかえた。

 

「あなたは悪くない。全て私が悪いの」

混乱している彼女は目の前が真っ白になった。

 

 

彼女が生まれ育ったのは南アフリカだった。

昔は今のような体型ではなく、ぽっちゃりとしていた。

ぽっちゃり体型のうえ、黒縁のメガネをかけていたので、学校ではいじめられていた。

いじめを受けるも、彼女は黙って耐え抜いていたという。

 

彼女は家に帰っても自分の居場所を見いだせなかった。

父親が酒に溺れて、母親に暴力を振るっていたのだ。

 

毎日のように酒に酔って帰ってくる父親を彼女は避けていた。

 

家中に響く罵声を聞きたくなかったのだ。

母親が暴力を振るわれる姿を見たくなかったのだ。

 

そんな幼少期を過ごした彼女は15歳の時にある悲劇に巻き込まれた。

父親が彼女にまで暴力を振るってきたのだ。

 

父親は彼女の髪をつかみ、顔面を蹴った。

罵声を浴びながら、彼女の顔をボコボコに殴った。

 

娘の身の危険を感じた母親はとっさに銃を握りして、銃口を父親に向けた。

 

「バン!」

 

父親な脳天を打ち抜かれ倒れこんだ。

彼女は一瞬何が起こったのかわからなかった。

 

目の前で父親が撃たれたのだ。

 

泣き崩れる彼女を母親は抱きかかえた。

 

家の近所の人が様子を見に来た。

すぐに警察も駆けつけた。

母親は事情聴取のため、連行されることになった。

 

彼女は呆然としていた。

今さっき、母親が自分の父親を撃ち殺したのだ。

そのことが、彼女の一生のトラウマになった。

 

結局、母親は正当防衛が認められ、罪には問われなかった。

しかし、彼女の心の傷は癒えなかった。

全て自分が悪いのだと思っていたのだ。

 

自分が生まれたことが原因で、母も父も不幸になったのだと……

 

そんな彼女を見て、母親は優しく声をかけた。

「あなたは何も悪くない」と。

 

彼女が16歳の時、ふと出場したモデルコンテストで優勝を果たす。

数ヶ月モデルとして活躍したのちに、昔からなりたかったバレエダンサーになる夢を追いかけるために、単身でニューヨークへ渡ることにした。

 

母親は巣立っていく娘に向かってこう投げかけた。

「あなたは何も悪いことをしていない。自分の夢を追いかけて」

 

彼女はニューヨークにわたり、バレエダンサーの夢を追いかけ始めた。

毎日の稽古で足が傷だらけになるも、自分のトラウマを忘れるためにも、彼女はバレエに打ち込んだ。

 

しかし、そんな彼女にまたしても不運が訪れる。

膝の怪我で自分の夢を諦めざる負えなくなったのだ。

 

彼女はバレエダンサーの夢を諦め、生活のために女優に転身する決意をする。

ロサンゼルスにわたり、女優の仕事を探すが、なかなか仕事にありつけなかった。

 

確かに彼女はスタイル抜群で、美しい美貌を兼ね備えていたが、ロサンゼルスには

そんな美女はたくさんいたのだ。

 

それに加え、彼女の南アフリカなまりの英語がネックになって、オーディションは立て続けに落っこちた。

 

生活も困窮し、彼女は小切手を現金に換えるため、ロサンゼルスの銀行を訪れた。

そのことが、彼女の運命を変えることになるとは思いもせずに……

 

そっけない態度で対応する銀行員に腹を立てた彼女は、口論になっていた。

「ファック! ファック!」

と連発して、銀行員にブチ切れていた。

 

そんな騒ぎを偶然見ていた、ハリウッドのエージェントが彼女に興味を持ったのだ。

よそから見たら、絶世の美女が、汚い南アフリカなまりの英語で、銀行員と口論しているのだ。

 

彼女の不思議な魅力に興味を持ったエージェントは彼女に声をかけた。

 

「うちで女優として働かないか?」と。

 

そのエージェントの出会いが彼女の運命を大きく変えた。

翌年から次々と仕事が舞い込んできた。

ブロンド美女としての仕事がたくさん来たのだ。

 

美しい美貌を兼ね備えた彼女はあっという間にトップ女優になっていった。

 

しかし、ブロンド美女の仕事ばかり来る日々が続き、彼女はうんざりしていた。

 

もっと自分を表現できるような女優の仕事をしたい。

そう思い始めていたのだ。

 

そんな時、あるシナリオと出会った。

それは実在する連続殺人犯アイリーンを題材にした「モンスター」という映画のシナリオだった。

 

その連続殺人犯はアメリカ本国では有名だった。

金に困り、娼婦として働く中、ヒッチハイクで乗せてもらった運転手を次々と殺していったのだ。

 

彼女はそのシナリオに心惹かれた。

アイリーンのトラウマと自分が重なって見えたのだ。

ヒッチハイクで乗せてもらった男性からレイプされそうになり、自分の身を守るために、アイリーンは仕方なく銃の引き金を引いてしまったのだ。

それが殺人のきっかけだった。

 

銃を見ることも辛かった彼女だったが、この役をやりたいと思った。

自分のトラウマを克服するためにも、やりたいと思ったのだ。

 

すぐにエージェントに連絡を取り、役作りを始めた。

実際にアイリーンが訪れていたバーにも通った。

 

バーの店主はその絶世の美女を見て

「君みたいな綺麗な金髪美女があの醜いアイリーンを演じれるわけがない!」

と言って馬鹿にしてきた。

 

美しすぎることが彼女の弱点にもなっていたのだ。

 

演技にのめり込んでいた彼女は14キロの増量をして、醜いスタイルを手に入れていった。歯も矯正した。

 

撮影前のメイクには2時間を費やした。

世界一の美女がもっとも醜い女を演じるのだ。

 

周囲は驚きを隠せなかった。

 

 

映画の撮影が進み、ついに殺人シーンの撮影になった。

そこで彼女は自分のトラウマに向き合うことになる。

 

今でも夢に見るあのトラウマ……

母親が父親を撃ち殺したあの日のことを……

 

彼女は撮影用の銃を握り、男性に向けた。

「バン!」

 

そのシーンは強烈な名場面になった。

トラウマを背負いこんだ一人の女優が、自分と向き合いながら演じたのだ。

 

映画が公開され、業界の話題をさらった。

 

あのブロンド美女が連続殺人犯アイリーンを演じた!

世界一の美女が世界一醜い女を演じた!

 

彼女の女優魂に周囲は驚かされたのだ。

 

映画は大ヒットし、その年のアカデミー主演女優賞候補にもなった。

 

その授賞式でまた彼女に世間は驚かされた。

撮影が終えて数ヶ月しかたっていないのに、いつもの絶世の美女の体型に戻っていたのだ。

たった数ヶ月で元の体型に戻したのだ。

 

映画の中で彼女が演じた連続殺人犯とアカデミー賞式に立つ彼女の姿とのギャップに

世間は驚いた。

 

その映画が公開されて14年たった今でも彼女はハリウッドの最前線で活躍している。

一般的にブロンド美女は30歳を超えたら、仕事がなくなると言われている。

次々と若い世代が入ってきて、仕事を奪われてしまうのだ。

 

しかし、辛い幼少期を過ごし、そのトラウマをも克服していく彼女の姿は世界中を虜にする。

孤独や苦悩の中、耐え抜いた彼女は今でもハリウッドで活躍している。

 

その女優の名はシャーリーズ・セロン

 

今もスクリーンを通じて、彼女は世界を魅了するその美貌を私たちに見せてくれる。

 

 

 

 

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この物語は5%の創作と95%の実話である。