ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

わっと飛び出すあの一瞬がたまらなく愛しい

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「旅がお好きですね?」

最近、記事などで海外旅行について書くことが多くて、人によくこう聞かれる。

 

私のパスポートには6つのスタンプが押されている。

日本国民として6カ国をまわったことになるが、果たしてそれが多いのか少ないのか?

 

これまで、アメリカやインド、東南アジアをバックパックで旅してきた。

とくにバックパッカーの登竜門と言われているインドは強烈だった。

 

あんなに自分の中の価値観がぶっ壊れた経験は今までになかった。

私は再び人生に悩むことがあったら、もう一度インドの渦に巻き込まれるのだろう……

 

バックパッカーという響きに憧れて色々国を旅してきたが、

正直に言うと……

 

私自身、旅しているより家でじっとしている方が好きだったりする。

家で映画を見ていたり、インドアなことの方が性に合っている。

 

しかし、数年に一回、妙に旅に出たくなる。

旅が好きというよりも旅に向かう飛行機の中で、これからの旅に思いを馳せている

あの感覚がたまらなく好きなのだ。

 

これからどんな旅が待っているのだろうか?

どんな出会いがあるのだろうか?

 

旅自体よりも、行きの飛行機の中が一番楽しいのだ。

あの異世界の中へ、わぁっと飛び出していく感覚がたまらなく好きなのだ。

その感覚が味わいたくて、私はまた飛行機に乗って旅に出るのかもしれない。

 

最近、そのわっと飛び出していく時と似た感覚をよく味わう。

それはライティングに励んでいる時だった。

 

 

私は大の国語嫌いだった。

文章読解も作文も大っ嫌いな学生だった。

 

高校受験の時も国語の偏差値38だった。

それがネックになっていて、受験でだいぶ苦戦した覚えがある。

 

小学校の時から大の読書嫌いで、本を読んでも全く頭に入ってこなかったのだ。

漢字もほとんど勉強した覚えがなく、中学生にして小3レベルの漢字がわからなかった。

高校受験は得意な数学で乗り切れたが、全国の人と競争する大学受験では無理だった。

 

センター試験で国語が壊滅的にできず、私は浪人することになる。

 

私が浪人時代に通っていた予備校で私の運命を変える出会いがあった。

 

 

私はこれまで国語の読解問題の授業を受けている時に、授業内容のほとんどを理解することができなかった。

というか先生の話が理解できなかったのだ。

 

「もっと論理的に説明してくれ」

そう思っていた。

私は文系を専攻していたが、脳みそは完全に理系だったのだ。

 

理系の脳みそを持つ人にはあるあるネタだと思うが、文系の感覚的に物事を語る人とは相性がとても悪いのだ。

論理的に理屈立てて説明してくれないと頭に入ってこないのだ。

 

私が出会った国語教師の99パーセントがこの物事を感覚的に捉える人だったので、

その人がいうことのほとんどが頭の中で整理できなかったのだ。

 

それも原因で私は国語嫌いになったのかもしれない。

 

しかし、その講師だけは違った。

ちゃんと論理的に理屈立てて説明してくれたのだ。

 

あまり人気の講師ではなかった。

しかし、その講師の授業を受けた瞬間。

「この人だ!」

とビビッと直感した。

 

この人が私の国語嫌いをなくしてくれるかもしれないと思った。

 

私はすぐに講師の質問室へ行き、国語で悩んでいることを打ち明けた。

 

感覚的に説明されると頭に入ってこない。

どうしても国語のセンター試験だけは点が取れない。

 

そう素直に言ったのだ。

 

講師はこう言った。

「君みたいな脳みそが理系の子に効く、とっておきの勉強法がある。

教えてあげるよ」

 

なんだその特別な勉強法は?

理系の脳みその子に効く?

どんな勉強法なんだ。

 

その時教えてもらったのはセンター試験の評論の問題を400文字で要約するということだった。

 

本当に要約するだけで点数が伸びるのか?

そう思って私はとりあえず過去問を要約することにした。

 

400文字原稿用紙に要約していく。

終えたらそれを講師に見せた。

 

「ここがダメ。この内容が要約に入ってない」

 

講師からダメ出しをもらっているうちに私は気づいた。

 

「要約って文章を読んで内容を理解する訓練なんですね?」

そう講師に聞いた。

 

「そういうこと! 君は重要なポイントを散らばって読み解く癖がある。

重要なポイントを書いて要約する訓練をすると、自然と論理的な読解力が身につくんだ」

 

私は講師のアドバイスを信じてセンター試験の評論問題の要約を始めた。

過去15年分を要約したと思う。

 

数ヶ月経つと国語の成績が一気に伸びてきた。

 

それと同時に本を読むのが好きになってきた。

 

講師のそのことを説明すると

「言ったとおりだろ。要約することで論理的に物事を捉えて読書する習慣がつくと国語の成績が上がるんだ。文章も読みやすくなったろ」

 

確かにセンター試験の要約を始めてから読書が大好きになっていった。

年間一冊も本を読んでこなかった私がである。

 

自分にとってその講師との出会いは物事の捉え方が変わる瞬間だったのかもしれない。

 

もう今となっては、その講師の名前すら覚えてない。

しかし、その講師からもらった影響は私の人生観を少なくとも変えたと思う。

 

それから私は大の読書好きになった。

ものを書くことが好きになった。

 

結局、志望の大学には行けなかったが、私は中の下ぐらいの大学に通うことになった。

昔から私は大の映画好きということもあり、大学では自主映画作りにハマっていった。

 

映画作りで一番初めにすることは脚本作りである。

私はセンター試験の過去問を解いていったように、映画作りも要約(あらすじ)を重視していった。

 

400文字の「あらすじ」さえきちんと書ければ、そこから50ページまで論理的に

展開できると思ったのだ。

 

実際、「あらすじ」さえ書ければ50ページまで簡単に書けた。

 

要約した内容を友達に見せ、

「このあらすじの映画、面白いか?」

と聞いていって反応をうかがったりした。

 

「あらすじ」がつまらない映画はまず面白くならない。

図書館で読んだ脚本の教科書に書かれている通りだった。

 

私は脚本作りにハマっていった。

ものを書くことが好きだった。

 

やはり、それも浪人時代にあの先生との出会った影響が大きかったような気がする。

 

大学を卒業して、テレビ番組の制作のADをやっている時も、ものを書いていた。

連日徹夜なのに、帰りの電車の中で寝ながら本を読んで、友人から頼まれたwebメディアにアップする書評を書いていたのだ

 

今思うと、よくそんな生活の中、書評を書いていたなと思う。

1日30分睡眠の中、ものを書いていたのだ。

 

私はものを書いている時、旅に向かう飛行機の中で感じるものと似た感覚を味合う。

 

わぁっと飛び出していく感じ。

 

きっと好きなことに夢中になっているとあの感覚を味わうのだ。

 

未だ見ぬ新たな世界へ飛び出していく感じ。

最近、私はプロのライターさんや小説家を目指している方と多く出会う機会があった。いろんな人たちと出会い、話しているうちに、やはり自分も同じようにものを書くことが好きなんだなということに気づいた。

 

好きだからこそ怖かったりもする。

自分の才能のなさに憂いたりもする。

 

しかし、最近はもう一度自分の夢を追いかけようと夜のマクドナルドにこもって脚本を書いていたりする。

破綻した脚本だと思う。

人に見せられる代物ではないかもしれない。

 

しかし、私はものを書いている時がたまらなく好きなのだと思う。

どんな新しい世界がこれから待っているのかワクワクしながら飛び込んでいく感じ。

好きなものに夢中になっている時に味わうあの感覚。

それが忘れられないのだ。

 

あの感覚を味わいたいからこそ私は今日も、ものを書くのだと思う。