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ライティング・ハイ

年間350本以上映画を見た経験を活かしてブログを更新

アメリカ映画を理解したいと思ったら、避けては通れないかもしれない本

 

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「何が言いたいんだ?」

幼い頃に父親に連れられて、「スターウォーズ エピソード3」を見た時だった。

 

エピソード1から始まる三部作はアナキン・スカイウォーカーが暗黒面に堕ちるまでを描いた壮大な物語だ。

 

その物語が完結するエピソード3が公開された時は、世界中で話題になっていた。

もちろん映画館はどこも満席だった。

 

当時、確か小学4年生くらいだった私は父親に連れられて、この壮大な物語の完結編を見に行くことにしたのだ。

 

オープニングからかっ飛ばして面白かった。

 

二人のジェダイが繰り広げる空中戦から始まるエピソード3を私のように興奮しながら見た人は多いかもしれない。

 

めちゃくちゃ面白い。

 

 

私は大満足のままエンドロールを迎えた。

 

会場は拍手に包まれていた。

 

「やっぱりスターウォーズだよな!」

「面白かった!」

「サイコーだ!」

という声が映画館の中でよく聞こえる。

 

しかし、父親はこうつぶやいていた。

 

「後半の展開はよくわからなかった……」

 

私は謎だった。

後半もめちゃくちゃ面白かったはずだ。

 

しかし、父親は展開についていけなかったという。

 

その後、私はトイレに入っていった。

映画館が終わった後のトイレはいつも混み合っている。

 

トイレで用を足していると、エピソード3を見たであろうお客さんはこうつぶやいていた。

 

「面白かったね。だけど、後半どうだった?」

 

何やら後半のアナキンが暗黒面に誘われる心情が理解できないみたいなのだ。

 

私は不思議だった。

何でこんなに面白いのに、見る人によって感想が違うんだ?

 

 

時が経ち、高校生になった頃、アメリカでめちゃくちゃヒットした

ダークナイト」という映画を見た。

 

クリストファー・ノーランの代表作だ。

 

ジョーカーとバットマンの攻防戦を描いたこの映画はアメリカのアカデミー賞の審査基準を変えたほどの、影響力を持つ作品になっていた。

 

私はこの映画を見て衝撃を受けた。

 

こんなにも深く人間を描いた作品はあったのだろうか。

明らか「カラマーゾフの兄弟」並みの大傑作だ。

深く人間を描くと同時に、アクションが満載で娯楽映画としても楽しめる。

 

 

ジョーカー役のヒュース・レジャーが命がけの芝居をしたことは有名だ。

 

悪に染まったジョーカーの心情を理解するのに、一人山小屋に篭って、悪者の心理を理解しようとしたのだ。

 

その後、撮影でジョーカー役を演じたヒュース・レジャーは急死した。

 

身を削ってジョーカーを演じたと言われている。

ダークナイト」におけるジョーカーの演技は、もはやハリウッド映画の歴史みたいになっている。

 

 

私も「ダークナイト」を見ている時、ジョーカーかっこいい〜と思いながら見ていた。

 

悪のジョーカーと正義のバットマンが繰り広げる攻防戦は伝説的だ。

この映画は法律の教科書にもなっていいかもしれない。

人間の正義と悪を見事に描ききった大傑作なのだ。

 

わたしは「ダークナイト」を見た後に、この映画のことを調べようと思い、

ネットで色々検索してみたりした。

 

すると、驚いた。

この映画は日本ではコケていたのだ。

 

 

は? となった。

なぜ、この傑作映画の日本の興行収入はイマイチなんだ?

 

アメリカでは記録に残る大ヒットをしていた。

欧米でも連日、話題になる程のメガヒットだった。

 

 

しかし、日本だけはコケていたのだ。

映画会社があまり宣伝をしなかったのだろうか?

いや、欧米でこれだけヒットしている映画を宣伝しないわけがない。

 

私は映画のことならこの人にお任せ! ということにしている映画評論家の町山智浩さんのラジオを聞いてみることにした。

 

もちろん、ダークナイトに関する町山さんの考察があった。

 

私はその解説を聞いて驚いた。

 

そうか!

そういうことだったんだ。

 

スターウォーズ エピソード3」で父親が首をかしげていたのもそういう理由だったんだと思った。

 

町山さんはある一冊を紹介しながら、アメリカ人の考える善と悪について鋭く考察していった。

 

 

私もその本を読んでみた。

それは2000年近く語り継がれる聖書の物語だった。

「ミルトンの失楽園」だ。

 

堕天使サタンがアダムとイブを誘惑する話だ。

今でも教会では語り継がれる有名な物語だという。

 

町山さんはこう解説する。

「アメリカ人にとって、サタンが真の悪なのだ」と。

 

 

堕天使のサタンが神に復讐しようと思い、神が作った人間アダムとイブを悪の道に誘惑していった。

知恵の樹の実を食べるように仕向けたのだ。

 

 

そのサタンがアメリカ人にとっての悪なのだと。

 

日本人の我々にとって、悪と言ったら悪いことをしている人のイメージがある。

法律を破り、悪いことをしている連中だ。

黒澤明の映画に出てくるヤクザなどがわかりやすい例だ。

 

とにかく悪いことをして、人々を苦しめているものが悪なのだ。

 

しかし、アメリカ人などのキリスト教圏の人たちが考える悪は違っている。

正義の味方を誘惑する者が悪なのだ。

 

幼い頃から、教会で聖書を読み聞かされている欧米の方にとって、堕天使サタンの物語が体の奥底まで染み付いている。

 

彼らにとって純粋なアダムとイブを誘惑した堕天使サタンこそが真の悪なのだ。

 

 

そのように、日本人とアメリカ人とが考えている悪に対するイメージの違いがあるため「ダークナイト」は日本ではあまりヒットしなかったのかもしれない。

 

ダークナイト」は悪のジョーカーがバットマンを悪の道に誘惑する話なのだ。

人間にとっての正義とは何か? ということを深く掘り下げている作品なのだ。

 

スターウォーズ エピソード3」もジェダイの騎士だったアナキンが暗黒面に誘惑されるまでの物語だった。

 

正義の味方を誘惑することこそ、悪だというイメージがない日本人にとっては理解に苦しむ内容だったのかもしれない。

 

私は「ミルトンの失楽園」を読んでから、アメリカ映画の見方が変わったかもしれない。

欧米にある純文学の歴史を紐解きながら、映画を見るとなおさら面白いのだ。